Vinyl Record Reviews
Gryphon(グリフォン)は、1972年初頭にロンドンで結成されたイギリスのプログレッシヴ・ロック/フォーク・ロック・バンドだ。中心になったのは、リチャード・ハーヴェイ(Richard Harvey:リコーダー、クルムホルン、マンドリン、キーボード)とブライアン・ガランド(Brian Gulland:バスーン、クルムホルン、リコーダー、トロンボーン、ヴォーカル)の2人で、どちらもロンドンの王立音楽大学(Royal College of Music)の出身だ。2人は、イギリスの伝統的なフォーク音楽に中世音楽やルネサンス音楽の要素を重ねたアコースティック・ユニットとして活動を始めた。
まもなくギタリストのグレアム・テイラー(Graeme Taylor)とドラマー/ヴォーカリストのデイヴ・オバリー(Dave Oberlé)が加わり、4人編成で本格的に動き出す。初期のGryphonは、バスーン、クルムホルン、リコーダーといった古楽器・木管楽器をロックの編成に持ち込んだ点で目立っており、当時の広報担当マーティン・ルイスは「ヘンリー8世がロックンロール・バンドにいる姿を想像してほしい、それがグリフォンだ」と形容した。
4人編成となったバンドはフォーク系レーベルのTransatlantic Recordsと契約し、バッキンガムシャー州アイルズベリーのStone Parish Churchで初ライヴを行った。1973年6月には、エンジニアのAdam Skeapingの屋根裏部屋で録音されたセルフタイトルの1stアルバム『Gryphon』(邦題『鷲頭、獅子胴の怪獣』)を発表し、古楽器や木管楽器にエレクトリック・ギターやキーボードを組み合わせたサウンドを展開した。
この時期にはセント・ポール大聖堂やサザーク大聖堂でのシェイクスピア記念行事での演奏、5日間のうちにBBCラジオの4局すべてで特集されるなど注目を集め、ドキュメンタリー映画『Glastonbury Fayre』にも楽曲を提供している。
1974年にはベーシストのフィリップ・ネスター(Philip Nestor)が加入し、同年4月にオックスフォードシャーのChipping Norton Recording Studiosで録音した2作目『Midnight Mushrumps』(邦題『真夜中の狂宴』)を発表する。この時期、ピーター・ホール演出によるロンドンのナショナル・シアターでのシェイクスピア劇『テンペスト』の舞台音楽を委嘱され、1974年4月にオールド・ヴィック・シアターで初演された。18分に及ぶ表題組曲「Midnight Mushrumps」のタイトルも『テンペスト』劇中の台詞から採られており、1974年7月にはロック・バンドとして初めてオールド・ヴィック・シアターで単独コンサートを行った。
その1か月後に録音され、1974年12月に発表された3作目『Red Queen to Gryphon Three』(邦題『女王失格』)は、チェスを題材にした4曲で構成された全曲インストゥルメンタル作品で、『Midnight Mushrumps』とともにバンドの代表作として高く評価されている。
この時期、王立音楽大学の先輩にあたる元イエス(Yes)のリック・ウェイクマンがイエスのマネージャーであるブライアン・レーンにバンドを紹介したことで、『Red Queen to Gryphon Three』はBell Recordsからアメリカでも発売された。ネスターに代わってベーシスト/フルート奏者のマルコム・ベネット(Malcolm Bennett)が加入した編成で、1974年11月から1975年5月にかけてイエスの北米および英国ツアーのオープニング・アクトを務めている。
1975年の4作目『Raindance』(邦題『レインダンス』)では、デイヴ・オバリーのヴォーカル曲の比重が増していく。同作の発表後にグレアム・テイラーとマルコム・ベネットが脱退し、ギタリストのボブ・フォスター(Bob Foster)、ベーシストのジョナサン・デイヴィー(Jonathan Davie)、ドラマーのアレックス・ベアード(Alex Baird、これによりオバリーはリード・ヴォーカルに専念)が加わった。
Harvest Recordsに移籍して1977年に発表した5作目『Treason』(邦題『反逆児』)では、初期の古楽器中心の色合いが薄まり、洗練されたロック・バンドとしての側面が前に出ている。しかしパンク・ロックの台頭による時代の変化や、リチャード・ハーヴェイの映画・テレビ音楽やセッション活動の多忙化により、バンドは1977年後半に解散した。
解散から32年後の2009年6月6日、ロンドンのクイーン・エリザベス・ホールでオリジナル・メンバー4人にジョナサン・デイヴィーとマルチ奏者のグラハム・プレスケット(Graham Preskett)を加えた編成で復活公演を開催した。2015年からライヴ活動を本格的に再開し、2016年のハーヴェイ離脱後は木管奏者のキース・トンプソン(のちにアンディ・フィンドンに交代)とベーシストのローリー・マクファーレンを加え、2018年には『Treason』以来41年ぶりとなる6作目のスタジオ・アルバム『ReInvention』(邦題『リインヴェンション (再確立)』)、2020年には7作目『Get Out Of My Father's Car!』(邦題『ゲット・アウト・オヴ・マイ・ファーザーズ・カー!』)を発表している。