Vinyl Record Reviews
Hans-Joachim Roedelius(ハンス=ヨアヒム・ローデリウス)は、1934年10月26日生まれのドイツ出身の電子音楽家だ。活動拠点はオーストリアのバーデン。ジャンルではElectronicに分類され、AmbientやMinimalの文脈で語られることが多い。
クラウトロックと実験電子音楽の流れを語るうえで、名前が挙がる人物のひとりだ。ソロ活動だけでなく、複数の重要ユニットで制作を続け、作品数もかなり多い。
ローデリウスはベルリンで育ち、第二次世界大戦後は東ドイツ側にいたが、1961年に西ベルリンへ逃れた。1960年代は学業や仕事をしながら過ごし、1960年代後半から音楽に本格的に集中するようになる。この時期に複数の楽器を学んだとされている。
1968年には音楽コミュニティを立ち上げ、また、コンラッド・シュニッツラーとともにアンダーグラウンド音楽クラブ「Zodiac Free Arts Lab」の設立にも関わった。1969年にはシュニッツラー、ディーター・メビウスとともに実験的電子音楽グループKlusterを結成している。
1970年にシュニッツラーが離脱したあとは、メビウスとのデュオとしてClusterの名で活動を継続した。Clusterは、ドイツの実験電子音楽とクラウトロックを代表する存在として扱われている。
1973年には、Neu!のミヒャエル・ローターと3人でHarmoniaを結成した。Brian EnoはHarmoniaを高く評価していたとされ、1976年にはフォルストを訪れて11日間ともに過ごし、録音を行った。その音源は後に『Tracks and Traces』として発表されている。
その後もEnoとはCluster名義で『Cluster & Eno』(1977年)、『After the Heat』(1978年)を制作していて、クラウトロックとアンビエントの接点を示す仕事として知られている。
ソロとしては1978年の『Durch die Wüste』でデビューした。以後は、少ない機材で録音した内省的な「Selbstportrait(自画像)」シリーズが初期ソロ作の中心になっている。簡素な2トラック機材での録音という点も、彼の制作姿勢をよく表している。
音楽的には、派手な展開よりも、音の重なりや反復、静かな推移を重視する作風で知られる。AmbientやMinimalのタグが付くのも、そのあたりの特徴とつながっている。電子音楽を土台にしながら、即興性や室内楽的な感触を持つ作品も多い。
1980年代初頭にはオーストリアへ移住し、その後いったんClusterは解散する。1990年代にはアンビエント・ジャズ・トリオAquarelloで活動し、後年にはClusterの再編成版ともいえるプロジェクトにも参加した。
ソロ、共作、グループ作を合わせると100作以上の作品があり、長い期間にわたって制作を続けてきたことがわかる。2018年には自伝も出版している。
まずはCluster、Harmonia、Brian Enoとの共作を押さえると、ローデリウスの位置が見えやすい。そこからソロの『Durch die Wüste』や「Selbstportrait」シリーズに進むと、より個人的な音の作り方が見えてくる。
ローデリウスは、クラウトロックの初期からアンビエントの展開期までをつないだ人物として見られている。作品数の多さだけでなく、複数の重要な共同作業を通じて、ドイツの実験音楽の流れに長く関わってきた点が大きい。
電子音楽を軸にしながら、グループでもソロでも制作を続けてきた人として、今も参照される場面は多い。