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Jon Lucien(ジョン・ルシアン、本名:Lucien Harrigan)は、1942年1月8日生まれ、2007年8月18日に逝去した英領ヴァージン諸島トルトラ島出身のシンガーソングライター。深く滑らかな極上のバリトン・ヴォイスと、ボサノヴァ、カリビアン・ミュージック、ジャズ、ソウルを洗練されたアレンジで融合させた独自のサウンドで知られ、ハービー・ハンコックからは「黄金の喉を持つ男」と称賛された。
1960年代半ばにアメリカへ移住し、1970年にRCAからアルバム『I Am Now』でデビュー。自作曲を中心に据えた1973年の2ndアルバム『Rashida』は、プロデューサーのラリー・ローゼン、名匠デイヴ・グルーシンによる優美なオーケストレーションを迎え、アコースティック・ギターとパーカッション、艶やかなスキャットが織りなす歴史的傑作となった。「Lady Love」「Would You Believe in Me」「Rashida」などを含む本作は、フリーソウル/レアグルーヴの金字塔として名高い。
続く1974年の3rdアルバム『Mind's Eye』では、フェンダー・ローズやシンセサイザーを取り入れ、よりスピリチュアルかつプログレッシヴなトロピカル・ジャズ・ソウルへと進化。同作収録の「Listen Love」は、90年代以降のアシッドジャズやクラブジャズ・シーンで熱狂的な支持を集めた。
Jon Lucienの最大の魅力は、ナット・キング・コールを想起させる深みと温もりを湛えたベルベット・ヴォイスにある。そこに自身のルーツであるカリブの叙情、ブラジル音楽の軽快なリズム、そして高度なジャズのコードワークが重なり合うことで、唯一無二のオーガニックな響きが生み出された。
派手なギミックに頼ることなく、洗練された歌声とアンサンブルの妙で聴かせる彼のスタイルは、クワイエット・ストームやスムース・ジャズの先駆としても高く再評価されている。時代やジャンルの枠を超え、メロウ・ミュージックの最高峰として世界中のリスナーやコレクターから愛され続けている。