Jon Lucien - Rashida (1973)
Jon Lucien『Rashida』
ジョン・ルシアンが1973年にRCA Victorから発表したセカンド・アルバム。英領ヴァージン諸島トルトラ島出身の彼が、ナット・キング・コールを思わせるビロードのように深く温かなバリトン・ヴォイスを軸に、カリブ海の空気感と洗練されたジャズ/ソウルを結びつけた不朽の名盤である。
制作背景・参加ミュージシャン
本作のプロデュースはラリー・ローゼンとシェップ・マイヤーズが担当し、音楽的支柱として名匠デイヴ・グルーシンが参加した。グルーシンは全編のオーケストラ・アレンジと指揮を手がけ、エレピやパーカッションも自ら演奏している(後にグルーシンとローゼンが名門GRPレコーズを共同設立することを考えると、この時期の共同作業は極めて重要である)。
演奏陣には、ルシアン自身のアコースティック・ギターやベースの弾き語りに加え、ノエル・ポインター(ヴァイオリン)、ペッパー・アダムス(バリトン・サックス)、コーキー・ヘイル(ハープ)、フランク・マラベ(パーカッション)ら、ニューヨーク屈指のジャズ/セッション・プレイヤーが集結。豊かな音の厚みと優美なアンサンブルを作り上げている。
時代の文脈
1973年はマーヴィン・ゲイやスティーヴィー・ワンダーらによる「ニュー・ソウル」が全盛を迎えていた時期だが、『Rashida』はその枠組みにとどまらず、ボサノヴァ、カリビアン・フォーク、アフロ・キューバン・リズムを本格的なジャズ・オーケストレーションと融合させた孤高の音世界を提示した。アメリカ本土のソウル/ファンクとは一線を画すハイブリッドなサウンドは、1974年の次作『Mind's Eye』へと続くルシアンの黄金期を決定づけた。
サウンドと聴きどころ
なんといっても屈指の人気を誇るのが、A面2曲目の「Would You Believe In Me」。躍動するドラム・ブレイクと弾むベースライン、華やかなホーン・セクションの上でルシアンの伸びやかな歌声が駆け抜ける、フリー・ソウル屈指のフロア・キラーである。
一方で、カリブのパーカッションとスキャットが心地よいオープニング「Kuenda」、デイヴ・グルーシンの優美なストリングスと深遠な低音ヴォーカルが息をのむ美しさを生む「Rashida」や「Lady Love」、そしてラテン/ボサノヴァの薫り漂う「Esperanza」や「Zenzile」に至るまで、静謐なアコースティックの響きとダイナミックなグルーヴが同居した極上の音楽世界が広がる。
後世への影響
発売当時は大きな商業的ヒットには至らなかったものの、1980年代末以降のUKレアグルーヴ・シーンで再評価され、1990年代の日本の「フリー・ソウル(Free Soul)」ムーヴメントにおいて熱狂的な支持を集めた。クラブDJやカフェ・ミュージック愛好家、さらにはAORリスナーに至るまで、オーガニックなメロウ・ソウル/ジャズ・ヴォーカルの最高峰として現在もジャンルを越えて愛され続けている。
盤仕様について
本作は1973年のUSオリジナル盤。RCA Victorのオレンジ・レーベルにDynaflexロゴが入る仕様で、ランアウトの「Ⅰ」刻印はインディアナポリス工場プレスを示している。裏ジャケットに「NOT FOR SALE PROMOTIONAL USE ONLY」のプロモスタンプが押された仕様も存在する。
トラックリスト
- A1 Kuenda 3:10
- A2 Would You Believe In Me 2:35
- A3 Lady Love 4:58
- A4 Luella 3:50
- A5 Shana 3:16
- A6 Satan 3:37
- B1 Rashida 6:08
- B2 The War Song 3:18
- B3 Esperanza 4:06
- B4 Love Everlasting 3:13
- B5 Zenzile 5:32
動画プレイリスト
このアーティストについて
Jon Lucien(ジョン・ルシアン、本名:Lucien Harrigan)は、1942年1月8日生まれ、2007年8月18日に逝去した英領ヴァージン諸島トルトラ島出身のシンガ...
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