Vinyl Record Reviews
The Equatics(ジ・エクアティクス)は、1970年代初頭にアメリカ・バージニア州ハンプトンのハンプトン高校(Hampton High School)に通う黒人生徒たちによって結成された伝説的なハイスクール・ファンク/ソウル・バンドだ。指導教官である“コーチ”フランク・ジョンソン("Coach" Frank Johnson)のもと、Carlton Savage、Renon Sumpter、Calvin Billups、Daniel “Buddy” Slade、Benjamin Crawford、Alvin Paige、Leo Davisら十代の若者たちで構成されていた。
彼らが音楽史に不滅の足跡を刻むきっかけとなったのは、ペプシコーラ社が主催した全米音楽コンテスト「New Sounds of 1972」での優勝であった。この栄冠によりスタジオ録音の機会を勝ち取った彼らは、1972年に自主制作アルバム『Doin' It Something!』(通称『Doin' It!!!!』)を録音し、わずか数百枚のみをプレスした。
当時の学校教育の一環として制作されたレコードの多くが、マーチング・バンドや賑やかなビッグ・バンド・ジャズであったのに対し、本作は十代の高校生が演奏したとは信じがたいほどディープでメロウ、そして陰影に満ちたダーク・ファンク/スウィート・ソウルを響かせていた。
彼らのサウンドの最大の魅力は、若さ特有の荒削りな熱量と、年齢不相応に大人びた哀愁を帯びたアンサンブルの奇跡的な同居にある。タイトで抑制の効いたリズム・セクション、憂いを帯びたホーン・アレンジ、そして切実なヴォーカルが独特の美しさを醸し出している。
アルバムの白眉であるオリジナル曲「Merry Go Round (Loving On Thealee)」は、チカーノ・ソウルやローライダー・カルチャーの愛好家からも神聖視されるメロウ・ソウルの金字塔だ。さらにビル・ウィザースの「Ain't No Sunshine」、バート・バカラックの「Walk On By」、サンタナの楽曲などのカバーにおいても、単なる模倣を超えたヘヴィなグルーヴと深い情感を吹き込んでいる。
流通枚数が極めて少なかった『Doin' It Something!』のオリジナル盤は、数十年間にわたり世界中のレコード・コレクターやディガーの間で高額取引される究極の「聖杯(ホーリー・グレイル)」として語り継がれてきた。
その後、Egon率いる名門発掘レーベルNow-Again Recordsによって公式に救出され、全世界でリイシューされたことで、その真価が白日の下に晒された。単なるローカルなハイスクール・バンドの記録にとどまらず、1970年代初頭のアメリカ南部におけるブラック・ユース・カルチャーの純粋な情熱と卓越した音楽性が結晶化した、レア・グルーヴ史上最高峰の奇跡のアルバムとして今なお絶大な支持を集めている。