Vinyl Record Reviews
Lords Of Acidは、1988年にベルギーのアントワープで始動した電子音楽ユニットだ。中心人物はMaurice Engelenで、Praga Khan名義でも知られている。プロフィール上では「Sex-obsessed Belgian-American post-industrial/techno band」とされていて、インダストリアル、テクノ、ロック、ブレイクビートをまたぐ活動で知られている。
結成当初はMajor Problemという名前で、Nathalie Delaetを前面に出した形でスタートした。その後、Nikkie Van Lieropが初期のボーカルを担当し、以降もメンバーやボーカルは何度も入れ替わっている。固定メンバーのバンドというより、Maurice Engelenを軸にした継続的なプロジェクトとして見るほうが近い。
Lords Of Acidを語るうえで外せないのが、ベルギーのニュー・ビート/ハード・ビートの流れだ。Maurice Engelenは1982年にAntler Recordsを設立していて、1980年代後半のベルギーで起きたニュー・ビート・ムーブメントの中心人物のひとりとして扱われている。ニュー・ビートは、アシッド・ハウス、テクノ、インダストリアルが交差したスタイルで、Lords Of Acidの土台にもなっている。
初期にはJos BorremansやK. Hendrickxらが関わり、1991年にはOliver Adamsが加入して制作面の中心に入った。この時期以降、Lords Of AcidはPraga Khan関連の主要プロジェクトとして位置づけられ、長く活動を続けていくことになる。
1988年のシングル「I Sit On Acid」は、Lords Of Acidの名前を広めた重要な曲だ。歌詞は挑発的な一節の反復が中心で、当時のレイヴ・シーンで大きく広がった。現在でも、彼らの楽曲の中でストリーミング再生数が多い曲のひとつとして扱われている。
この曲を含む1991年のデビュー・アルバム『Lust』は、アンダーグラウンドでカルト的な人気を集めた。ここで、Lords Of Acidの基本線になった音がはっきりする。インダストリアル寄りの打ち込み、テクノの反復、ロック的な押し出し、そして性的なテーマを前面に出した歌詞が並ぶ構成だ。
Lords Of Acidは、ボーカルの交代がかなり多いグループでもある。Ruth McArdleが1994年作『Voodoo-U』でリードシンガーを務め、その後はNikkie Van Lieropが再び前に出た。2000年にはDeborah Ostregaがツアーとアルバム『Farstucker』期のボーカルを担当している。
2001年から2002年にかけてのツアー後は活動休止に入り、Maurice EngelenとOliver AdamsはPraga Khanのソロ活動に力を入れていた。その後、2010年に「Sextreme Ball」ツアーで再始動し、Lacey Conner、Sin Quirin、Murv Douglas、Kirk Salvadorらを含む新編成で活動を再開した。
2011年にはMea Fisherが新しいリードシンガーになり、2012年にアルバム『Deep Chills』を発表している。2017年にもツアーを行い、2018年にはMarieke Bresseleersが新フロントウーマンとして紹介され、同年に『Pretty In Kink』が出た。2022年からはGigi Ricciがリードボーカルを務め、2024年の「Make Acid Great Again」ツアーではOliver Adamsが再加入し、途中でGigi Ricciが健康上の理由で離脱したためCarla Harveyが交代で参加している。
Lords Of Acidの音楽は、電子音楽を軸にしつつ、ロックやヘヴィメタルの要素も取り込んでいる。打ち込みのビートはテクノやブレイクビート寄りで、上に乗るシンセやサンプルはインダストリアル色が強い。曲によってはギターの比重もあり、クラブ向けの反復とバンド的な押し出しが同居している。
歌詞面では、性、快楽、薬物といったテーマを露骨に扱うことが多い。こうした内容は初期からグループの特徴として知られていて、音楽性と同じくらいLords Of Acidのイメージを形作ってきた。
Lords Of Acidは、ベルギー発のニュー・ビート/インダストリアル・テクノを世界に広げた存在としてよく挙げられる。特に「I Sit On Acid」のヒットは、アシッド・ハウスやレイヴ文化と接続しながら、過激な歌詞とクラブ向けのビートを結びつけた例として見られている。
メンバー交代や活動休止を挟みながらも、Maurice Engelenを中心にプロジェクトとして続いている点も特徴だ。ベルギーの電子音楽史をたどるとき、Lords Of AcidはPraga Khan周辺の流れと一緒に確認しておきたいグループだ。