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This Mortal Coil(ディス・モータル・コイル)は、名門インディー・レーベル「4AD」の創設者Ivo Watts-Russell(アイヴォ・ワッツ=ラッセル)と、プロデューサー/エンジニアのJohn Fryer(ジョン・フライヤー)を中心とする音楽プロジェクト/スタジオ・コレクティヴだ。活動期間は1983年から1991年までで、3枚のアルバムを残した。Cocteau TwinsやDead Can Danceなど4ADに所属するアーティストたちが多数参加し、ドリーム・ポップ、アンビエント、ゴシックが融合した幽玄な「4AD美学」を象徴するプロジェクトとなった。
This Mortal Coilという名前は、シェイクスピアの戯曲『ハムレット』の有名な一節(「shuffled off this mortal coil=この現世の煩わしさを脱ぎ捨てたとき」)に由来し、モンティ・パイソンの「死んだオウム」のコントでも引用されている。
このプロジェクトは、アイヴォ・ワッツ=ラッセルが深く愛する楽曲をカヴァーする企画として始まった。名門Blackwing Studiosを拠点にジョン・フライヤーとともに音作りを追求し、楽曲ごとに最適なヴォーカリストや演奏者を迎え入れる柔軟なコレクティヴ形式がとられた。
プロジェクトの記念碑的傑作。Tim Buckleyのカヴァー「Song to the Siren」は、Cocteau TwinsのElizabeth Fraserの浮世離れした歌声とRobin Guthrieの空間的なギターをフィーチャーし、全英インディーズ・チャートに101週連続ランクインする伝説的名曲となった。Big Star(Alex Chilton)の「Kangaroo」「Holocaust」などのカヴァーも収録されている。
2枚組の大作。Simon Raymonde(Cocteau Twins)やAlison Limerickらが参加し、インストゥルメンタルのアンビエント小品とヴォーカル曲がシームレスに連なる流麗な音世界を構築した。
3部作の完結編。Kim Deal(Pixies / The Breeders)、Tanya Donelly(Throwing Muses / Belly)、Caroline Crawley(Shelleyan Orphan)らが参加し、静謐でメランコリックな美意識の到達点を示した。
リバーブの効いた幽玄な音像、ストリングスやシンセサイザーの静かなレイヤー、そして卓越した女性ヴォーカルの神秘的な響きが最大の特徴だ。カヴァー曲のメロディを尊重しながらも、原曲とはまったく異なる質感の音響美へと再構築した。
また、デザイナーのVaughan Oliverと写真家Nigel Griersonによるデザインユニット「23 Envelope(後のv23)」が手がけた耽美的なジャケット・アートワークは、サウンドと完璧に共鳴し、80年代インディー・カルチャーにおける視覚表現の金字塔となった。
プロジェクト完結後、アイヴォは1998年に同様のコンセプトを持つユニット「The Hope Blister」を立ち上げている。