This Mortal Coil - It'll End In Tears (1984)
This Mortal Coil 1984

This Mortal Coil - It'll End In Tears (1984)

Electronic Rock Ambient Avantgarde Ethereal Dream Pop

This Mortal Coil『It’ll End In Tears』

4ADの創設者Ivo Watts-Russellが主導したThis Mortal Coilのデビュー・アルバム。もともとは1983年、Modern Englishの「Sixteen Days」と「Gathering Dust」をつなぎ直す案から始まり、そこにCocteau TwinsのElizabeth FraserとRobin Guthrie、CindytalkのGordon Sharpらが集められた。B面に置かれたTim Buckley「Song to the Siren」は、FraserとGuthrieがおよそ3時間で録音したものだが、Watts-Russellがこれを7インチのA面にして1983年9月に出すとアンダーグラウンドなヒットになった。それを受けて、4ADのアーティストたちがWatts-Russellの好きな曲をカバーするアルバムとして構想されたのが本作である。名前は、Spiritの曲「Dream Within a Dream」の一節から取られ、それはシェイクスピアの『ハムレット』で死を意味する「this mortal coil」を踏まえている。

制作背景・エピソード

本作の録音は1984年、ロンドンのウォータールーにある、聖別を解かれた旧All Hallows教会を使ったBlackwing Studiosで行われた。エンジニア兼プロデューサーは、Depeche Modeの『Speak & Spell』も手がけたJohn Fryer。録音の場では、参加ミュージシャンの多くがスタジオに着くまで何を録るのか知らされておらず、Watts-Russellは大まかな方向だけを示して、編曲は演奏者に委ねたという。コクトー・ツインズのサイモン・レイモンドは予定よりはるかに大きな役割を担い、2024年の伝記で自分を「指示どおりに弾く雇われガンマン」と呼んでいる。

収録曲は、Alex Chiltonの「Kangaroo」と「Holocaust」、Rema-Remaの「Fond Affections」、Roy Harperの「Another Day」、WireのColin Newmanによる「Not Me」など、他アーティストの楽曲をThis Mortal Coil流に組み替えたものが中心。Gordon Sharpは「Kangaroo」と「Fond Affections」を歌い、Buzzcocks、MagazineのHoward Devotoは「Holocaust」を歌う。「Another Day」はFraserが歌ったが、Guthrieはプログレだとして入れることに反対していた。Dead Can DanceのLisa Gerrardは「Waves Become Wings」と「Dreams Made Flesh」を書いて歌い、後者では彼女の揚琴にBrendan Perryがバスドラムを添えた。「Not Me」はModern EnglishのRobbie Greyが歌っている。「A Single Wish」では、冒頭のピアノをSteven Youngが弾き、レイモンドがGizmotronで鳴らしたチェロは録音に非常に苦労したという。

ジャケットは23 EnvelopeのNigel Griersonが撮影し、Vaughan Oliverが構成した。写っているのはのちにPallas Citroenとして知られるYvetteで、制作陣は映画『イレイザーヘッド』や『忘れられた人々』の影響を受けたイメージを狙ったとされる。The GuardianのSusan Corriganは1996年に、このジャケットが「不気味で天上的な4ADの美学」を確立する助けになったと書いている。

時代の文脈

1984年10月1日発売。全英アルバム・チャートでは38位、英インディー・アルバム・チャートでは1位を記録した。アメリカではAtlanticにライセンスされたが、売上は約8,000枚で1年ほどで廃盤になっている。

「Song to the Siren」は全英66位にとどまりながら、英インディー・チャートでは3位、101週も留まって1980年代のインディー・チャートで4番目の記録になり、2011年までに50万枚以上を売った。さらに「Kangaroo」も英インディー・チャート2位を記録している。

後世への影響

本作はTim Buckley、Alex Chilton、Roy Harperへの関心を呼び戻したとされる。「Song to the Siren」はTim Buckleyの死後の売上を押し上げ、息子Jeff Buckleyの初期の成功にもつながったとされている。FraserはのちにJeff Buckleyとデュエットも録音した。

David Lynchは『ブルーベルベット』で「Song to the Siren」を使おうとしたが、使用料の問題で断念し、代わりにAngelo Badalamentiと「Mysteries of Love」を作った。その後、1997年の『ロスト・ハイウェイ』でこの曲を印象的に使っている。2009年の『ラブリーボーン』でも使用された。

影響を受けた側の発言も多い。Anohni、Bat for Lashes、Perfume Genius、Amen Dunesらが本作を重要な参照点として挙げており、AnohniとBeach Houseは特に「Song to the Siren」を挙げている。The GuardianのDorian Lynskeyは2006年、原曲より優れたカバーの7位にこの曲を選んだ。批評面では、PitchforkのNed Raggettが2011年に9.0点を付け、「落ち着いた、影のあるロマンティシズムの気分」と評し、Classic Popは「エコーとリヴァーブの、豊かでゴシック・ロマンティックな渦に包まれている」と書いている。2018年にはPitchforkのドリーム・ポップ・ベスト30で8位に入っている。This Mortal Coilはその後『Filigree & Shadow』(1986年)、『Blood』(1991年)を出して活動を終えた。

トラックリスト

  1. A1 Kangaroo 3:31
  2. A2 Song To The Siren 3:30
  3. A3 Holocaust 3:38
  4. A4 Fyt 4:24
  5. A5 Fond Affections 3:51
  6. A6 The Last Ray 4:08
  7. B1 Another Day 2:54
  8. B2 Waves Become Wings 4:26
  9. B3 Barramundi 3:56
  10. B4 Dreams Made Flesh 3:48
  11. B5 Not Me 3:44
  12. B6 A Single Wish 2:27

動画プレイリスト

公開: 2026年10月

このアーティストについて

This Mortal Coil

This Mortal Coil

This Mortal Coil(ディス・モータル・コイル)は、名門インディー・レーベル「4AD」の創設者Ivo Watts-Russell(アイヴォ・ワッツ=ラッセル)と、プ...

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