De La Soul - 3 Feet High And Rising (1989)
De La Soul 1989

De La Soul - 3 Feet High And Rising (1989)

Hip Hop Boom Bap Conscious

De La Soul『3 Feet High And Rising』(1989) レコード解説

De La Soulのデビュー作『3 Feet High And Rising』は、1989年のヒップホップを語るうえで外せない1枚だ。Long Island、Amityville出身の3人組が、Prince Paulのプロデュースのもとで作り上げた本作は、当時の空気をそのままなぞるのではなく、サンプルの切り貼り、会話のようなスキット、遊びのある言葉選びを前面に出した作品として知られている。Tommy BoyからのUSオリジナル盤は、その内容だけでなく、レーベルの勢いも強く反映したタイトルだ。

作品の位置づけ

De La Soulは、A Tribe Called Quest、Jungle Brothers、Queen Latifah、Black Sheep、Monie Loveらと並ぶNative Tongues系の流れに属するグループとして見られてきた。『3 Feet High And Rising』は、その中でも特に早い段階で広く知られた作品で、のちのジャズ寄りのヒップホップやオルタナティブ・ヒップホップの土台に近い役割を持つ。グループ自身にとっても、これが最初の大きな到達点であり、後年の『De La Soul Is Dead』であえてイメージを崩しにいく流れを考えると、最初の名刺代わりのようなアルバムでもある。

サウンドと聴きどころ

盤を通して耳に残るのは、細かく刻まれたサンプリングと、曲間をつなぐスキットの多さだ。録音はNYCのCalliope、ミックスはIsland Mediaで行われている。Direct Metal Mastering仕様で、USオリジナル盤はSPAR表記のあるランアウトと、B面ラベルのエンボス“A”で識別される。実際に聴くと、音の断片が次々に現れては消える編集の感覚が強く、1曲ごとの完成度だけでなく、アルバム全体の流れで聴かせる作りがよく分かる。

代表曲はやはり「Me Myself and I」だろう。シングルとしても知られ、グループの名前を広く押し上げた楽曲。内省的な内容を持ちながら、重苦しさよりも軽やかさが前に出るのがこの時期のDe La Soulらしい。「Eye Know」や「Say No Go」も含め、ラップの運び、コーラスの置き方、サンプルの組み合わせが非常に細かい。「Buddy」ではJungle BrothersとQ-Tipが参加しており、Native Tonguesの横のつながりがそのまま曲の中に見える。

D.A.I.S.Y. Ageと当時の文脈

この作品を語るとき、D.A.I.S.Y. Ageの存在は重要だ。Posdnuosが掲げた「Da Inner Sound, Y'all」の略で、明るさや遊び心を前面に出す姿勢を示したものだ。当時のヒップホップでは、のちにギャングスタ・ラップとして定着していく硬い美学も強まっていたが、De La Soulはそこから少し離れた場所にいた。花や日常の感覚、言葉のズレを使った表現が多く、レーベルの打ち出し方も含めて「ヒップホップ・ヒッピー」と見られた時期がある。ただし、本人たちはそのラベルに収まりきらない動きをしていた。

評価と影響

本作は1989年2月のリリース後、The Sourceの初期の「5マイク」評価作品の一つとして扱われ、Village Voiceの年末批評家投票では1989年の1位を獲得した。Billboard 200では24位、R&B/ヒップホップ・アルバムチャートでは1位、RIAAではプラチナ認定を受けている。「Me Myself and I」は1990年のグラミー賞「Best Rap Performance」にノミネートされた。後年にはRolling Stone誌の歴代アルバム500選で103位、さらに2010年には米議会図書館のNational Recording Registryにも選出されている。

一方で、このアルバムはヒップホップにおけるサンプリングの扱いを考えるうえでもよく話題に上がる。B面収録の「Transmitting Live From Mars」でThe Turtlesの「You Showed Me」のフレーズを無断使用した件をきっかけに訴訟が起こり、最終的には和解に至った。この出来事は、その後のサンプル使用と権利処理の考え方に影響を与えた案件として知られている。

このUSオリジナル盤について

今回のUS盤はTommy BoyのTBLP 1019、ラベル表記ではTB 1019。カバーのスパインにはTBLP 1019が記され、紙製のインナーにはカートゥーンとクレジットが入る。オリジナルのTommy Boy盤としての意味が強く、後年の再発盤とは、当時のラベル仕様やマスタリング由来の質感で差が出るタイプのタイトルだ。収録内容そのものは変わらずとも、1989年当時のTommy Boyの空気を含んだ一枚として扱われている。

まとめ

『3 Feet High And Rising』は、De La Soulの出発点であり、1989年のヒップホップの幅を広げた作品だ。サンプルの使い方、スキットを含む構成、Native Tongues周辺とのつながり、そして「Me Myself and I」に代表される代表曲の存在まで、後のオルタナティブ・ラップの基準点のように語られてきた。USオリジナル盤で聴くと、その時代のTommy Boyが持っていた制作感覚まで見えてくる。

トラックリスト

  1. A1 Intro 1:41
  2. A2 The Magic Number 3:14
  3. A3 Change In Speak 2:32
  4. A4 Cool Breeze On The Rocks 0:37
  5. A5 Can U Keep A Secret 1:40
  6. A6 Jenifa Taught Me (Derwin's Revenge) 3:23
  7. A7 Ghetto Thang 3:34
  8. A8 Transmitting Live From Mars 1:11
  9. A9 Eye Know 4:12
  10. A10 Take It Off 1:52
  11. A11 A Little Bit Of Soap 0:49
  12. A12 Tread Water 3:44
  13. A13 Potholes In My Lawn 3:47
  14. B1 Say No Go 4:19
  15. B2 Do As De La Does 2:06
  16. B3 Plug Tunin' (Last Chance To Comprehend) 4:06
  17. B4 De La Orgee 1:12
  18. B5 Buddy 4:54
  19. B6 Description 1:30
  20. B7 Me Myself And I 3:40
  21. B8 This Is A Recording 4 Living In A Full Time Era (L.I.F.E.) 3:09
  22. B9 I Can Do Anything (Delacratic) 0:40
  23. B10 D.A.I.S.Y. Age 3:55

動画プレイリスト

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