Gabor Szabo - Jazz Raga (1967)
Gabor Szabo 1967

Gabor Szabo - Jazz Raga (1967)

Rock Jazz Funk / Soul Psychedelic Rock Post Bop Psychedelic

Gabor Szabo『Jazz Raga』(1967) について

ガボール・ザボの『Jazz Raga』は、1967年にImpulse!から出たアルバムだ。ハンガリー出身のジャズ・ギタリストが、アメリカのジャズ・シーンで独自の立ち位置を固めていた時期の作品で、タイトルどおり「ジャズ」と「ラーガ」の要素を近づけた内容になっている。録音は1966年8月4日と17日の2日間、ニュージャージー州イングルウッド・クリフスのVan Gelder Studio。プロデュースはボブ・シール。Impulse!の看板が強かった時代の空気も、そのまま閉じ込めた1枚。

作品の位置づけ

ザボは1956年のハンガリー動乱を機にアメリカへ渡り、ボストンのBerkeley School of Musicで学んだのち、チコ・ハミルトンのグループで経験を重ねた。本作は、Impulse!でリーダー作を出し始めた時期の流れにあり、『Spellbinder』などと並んで語られることが多い。彼の音楽は、モダン・ジャズの語法に、ポップスやロック、母国の音楽的感覚を混ぜていくところに特徴があるが、『Jazz Raga』ではその方向性がかなりはっきり出ている。

特に目立つのが、ギターに加えてシタールを弾いている点だ。1966年は「Paint It Black」など、ロックの側でもシタールが耳に入る時期で、このアルバムも同時代の空気を共有している。とはいえ、単なる流行の借用ではなく、モーダルなジャズの進め方と、インド音楽を思わせるフレーズが、コンパクトな曲の中で並走している印象が強い。

収録内容と演奏

全11曲、約34分という長すぎない構成。演奏は、ベースのジョニー・グレッグ、ドラムスのバーナード・パーディを軸に、一部でボブ・ブッシュネルがギターを加える。録音日は2回に分かれていて、A1、A4、B2、B4、B5が8月4日、A2、A3、A6、B1、B3が8月17日録音。こうした分割録音もあってか、曲ごとの色合いの差がはっきりしている。

曲名も内容をそのまま示すものが多い。「Search For Nirvana」「Krishna」「Ravi」など、インド文化を意識した題名が並ぶ。「Mizrab」はシタールを弾く際のピックを指す言葉で、楽器への関心がそのままタイトルになっている。「Raga Doll」はゲイリー・マクファーランド作で、ザボと縁の深い作家性が見える。カヴァーでは、ローリング・ストーンズの「Paint It Black」、ファン・ティゾールの「Caravan」、ガーシュウィンの「Summertime」を取り上げている。

聴きどころ

実際に聴くと、まずギターの音数の置き方が端的だ。派手に弾き倒す場面よりも、フレーズの間に余白を残しながら進む場面が多い。そこにシタールが入ることで、音の輪郭が少し変わる。ジャズのリズム感を保ちながら、東洋趣味に寄りすぎないバランスを取っているのが、この盤の特徴として残る。

「Paint It Black」は、この時代の文脈が分かりやすい1曲だ。すでに有名になっていた曲を、ジャズ・ギタリストが自分の言葉に置き換える構図で、原曲の持つ硬い推進力が別の角度から見えてくる。「Summertime」では、スタンダードの素材を使いながらも、通常のスウィングの枠には収まらない。こうしたカヴァーとオリジナルが並ぶことで、アルバム全体が単なる実験盤ではなく、ザボのレパートリー集としても機能している。

ジャケットとレーベル

オリジナルはUSのImpulse!、カタログ番号はA-9128。ゲートフォールド仕様で、表裏ともに上部にSTEREO表記が入る。レーベル表記は「A Product of ABC-Paramount Records, Inc.」で、ジャケット側には「A Product of ABC Records, Inc」とある。初期のImpulse!らしい表記の揺れも、当時のレーベル事情をそのまま残している。なお、カバーとレーベルでカタログ番号の印字位置が異なる点も、この盤の確認ポイントになっている。

同時代との関係

『Jazz Raga』は、ジャズがロックや異文化要素を取り込みながら境界を広げていた1960年代後半の流れの中にある。チコ・ハミルトン周辺での活動、さらにImpulse!での仕事を経たザボは、のちにSkye RecordsをCal Tjader、Gary McFarlandと立ち上げるが、その前段階として本作はかなり重要な位置に置かれる。ジャズ・ギターの枠組みの中で、シタールやサイケデリックな感覚を扱った点も、当時としてはかなり早い部類に入る。

発売当時の評価は一様ではなかったが、後年はカルト的な支持を集めてきた。Impulse!の中でも、ジョン・コルトレーンの系譜とは少し違う方向からレーベルの幅を示した1枚として見ておくと、アルバムの輪郭がつかみやすい。ジャズ、ロック、ファンク/ソウルの棚に置かれることもあるが、実際にはそのどれか一つに収まる内容ではない。ザボの個性と、1967年という時代の重なりが、そのまま音になっている。

トラックリスト

  1. A1 Walking On Nails 2:46
  2. A2 Mizrab 3:32
  3. A3 Search For Nirvana 2:07
  4. A4 Krishna 3:11
  5. A5 Raga Doll 3:42
  6. A6 Comin' Back 1:55
  7. B1 Paint It Black 4:40
  8. B2 Sophisticated Wheels 3:52
  9. B3 Ravi 2:59
  10. B4 Caravan 2:58
  11. B5 Summertime 2:58

動画プレイリスト

公開: 2026年9月
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