Mos Def - Black On Both Sides (1999)
Mos Def『Black On Both Sides』について
Mos Defの『Black On Both Sides』は、1999年にUSのRawkusから登場したソロ・デビュー作である。ブルックリン出身のラッパー、Mos DefことDante Terrell Smithが、Black Starでの活動を経て、ひとりの表現者として提示したアルバムでもある。90年代後半のニューヨーク・アンダーグラウンド・ヒップホップを語るうえで外せない作品で、Rawkusというレーベルの存在感と、当時の空気をそのまま刻んだ一枚として扱われている。
この盤は1999年のUSオリジナル。ジャケット表記やクレジットのまとまりも含め、当時の初出形態としての価値がある。付属インサートにはクレジットが印刷されており、作品の制作体制を確認しやすい仕様になっている。盤面には「Printed in the U.S.A.」の記載もあり、90年代末のUSプレスらしい情報がきちんと残っている。
Black Starの延長線上にある、最初のソロ作
Mos Defはこのアルバム以前に、Talib KweliとのユニットBlack Starで『Mos Def & Talib Kweli Are Black Star』を発表している。その流れのまま、Rawkus周辺の知性派ヒップホップ、いわゆるコンシャスな文脈の中でソロデビューを飾ったのが本作である。単なる“次の作品”ではなく、グループで共有していた視点を、より個人の声に寄せて組み直した内容になっている。
録音は1998年から1999年にかけて行われ、プロデューサー陣も非常に幅広い。「Mathematics」はDJ Premier、「Ms. Fat Booty」はAyatollah、「Hip Hop」はDiamond D、「Love」「Speed Law」は88-Keys、「New World Water」「Rock ’n’ Roll」はThe BeatnutsのPsycho Les、「Got」はA Tribe Called QuestのAli Shaheed Muhammadが担当している。Mos Def自身も複数曲で共同プロデュースに関わり、ベース、コンガ、キーボード、ドラムまで演奏している点が重要で、ラップだけで完結しない作りになっている。
収録曲の核になる数曲
代表曲としてまず挙がるのが「Ms. Fat Booty」である。シングルとしても存在感が強く、ラップ・チャートで3位を記録した。Aretha Franklin「One Step Ahead」のサンプリングを使った構成で、ビートの切り方、言葉の運び、ストーリーの見せ方がまとまっている。結果として、この曲がアルバム全体の入口になっている。
「Umi Says」も印象が強い。ここではWeldon Irvineがキーボードで参加していて、アルバムの中でも少し空気の違う配置になっている。ラップ中心の流れの中に、歌と演奏の比重がはっきりある曲で、Mos Defの表現が“MC”の枠だけに収まっていないことが見えやすい。
「Mathematics」はDJ Premierの制作で、90年代ヒップホップの王道的な組み立てがそのまま表に出る曲である。硬いドラム、言葉の切れ味、情報量の多いラップが前に出る。「Hip Hop」はDiamond Dの手触りが出ていて、ジャンル名そのものをタイトルに置きながら、内容はかなり具体的で、当時のシーンへの視線が強い。「Love」は88-Keysのプロダクションによって、アルバムの中でも少し柔らかい輪郭を持つ。
聴き味とアルバムの流れ
全体を通して、ビートはブーム・バップを軸にしながら、ジャズ寄りのコード感やソウルのサンプル処理が自然に入ってくる。派手な装飾で押すタイプではなく、ラップの内容とトラックの細部で引っ張る作りである。聴いていると、1曲ごとの完成度よりも、アルバム全体で視点がつながっている感じが残る。曲間の流れも含めて、90年代末のNYアンダーグラウンドらしい密度がある。
Mos Defのラップは、言葉数の多さだけで押し切るものではない。語尾の置き方、間の取り方、声の温度で見せる場面が多く、制作陣のトラックとぶつからずに並ぶ。そのため、サンプリング主体のビートの上でも、声が前に出たり引いたりする動きがはっきりしている。演奏参加も含めて、作品全体に“自分で組み立てている”感覚が残る。
評価と位置づけ
チャート面ではBillboard 200で最高25位、R&B/Hip-Hop Albumsで3位、Rap Albumsで1位を記録し、2000年2月にはRIAAのゴールド認定も受けている。アンダーグラウンド寄りのラッパーの作品としては、かなり広い層に届いた部類に入る。批評面でも評価は高く、AllMusic、Spin、Pitchfork、Entertainment Weeklyなど主要メディアで好意的に受け止められた。
Rawkusというレーベルの文脈でも、このアルバムは重要である。Company Flow、Talib Kweli、Common周辺とも接続しながら、商業的な大きさよりも内容の濃さで存在感を作っていた時代の空気がここにある。後年のMos Def、つまりYasiin Beyの活動を見ても、この作品で示したラップ、演奏、構成力の幅はそのまま土台になっている。ソロ初作でありながら、すでにひとつの完成形に近い輪郭を持つアルバムである。
トラックリスト
- A1 Fear Not Of Man 4:29
- A2 Hip Hop 3:16
- A3 Love 4:23
- A4 Ms Fat Booty 3:44
- B1 Speed Law 4:16
- B2 Do It Now 3:50
- B3 Got 3:28
- B4 Umi Says 5:11
- C1 New World Water 3:12
- C2 Rock 'n' Roll 5:03
- C3 Know That 4:04
- C4 Climb 4:02
- D1 Brooklyn 5:10
- D2 Habitat 4:39
- D3 Mr. Nigga 5:13
- D4 Mathematics 4:06
- D5 May - December 3:29
動画プレイリスト
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Mos Def - Fear Not of Man
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Mos Def - Hip Hop
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Mos Def - Love
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Mos Def - Ms. Fat Booty
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Mos Def - Speed Law
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Mos Def - Do It Now
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Mos Def - Got
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Mos Def - Umi Says
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Mos Def - New World Water
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Mos Def - Rock N Roll
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Mos Def - Know That
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Mos Def - Climb
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Mos Def - Brooklyn
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Mos Def - Habitat
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Mos Def - Mr. Nigga
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Mos Def - Mathematics
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Mos Def - May-December