Vinyl Record Reviews
Mos Defは、1973年12月11日にニューヨークのブルックリンで生まれたラッパー、俳優だ。本名はダンテ・テレル・スミスで、現在はYasiin Bey名義でも活動している。トリニダード系のルーツを持ち、ブルックリンを拠点にキャリアを築いてきた。
ラップ活動は1990年代半ばに本格化した。最初期には、弟のDCQと妹のCesと組んだUrban Thermo Dynamicsの一員として動いていた。その後、1996年ごろにTalib KweliとユニットBlack Starを結成し、1998年にはデビュー作『Mos Def & Talib Kweli Are Black Star』をRawkus Recordsから発表した。
この作品は、90年代後半のニューヨーク・アンダーグラウンドとコンシャス・ヒップホップを語るうえで外せない一枚として扱われている。社会的なテーマを押し出したラップと、シンプルで硬いビートの組み合わせが印象に残る。
1999年のソロ・デビュー作『Black on Both Sides』では、Billboard 200で25位を記録した。「Ms. Fat Booty」は代表曲のひとつとしてよく挙げられる。2004年の『The New Danger』は自己最高となるBillboard 200の5位を記録し、2009年の『The Ecstatic』は批評面でも高く評価され、グラミー賞にもノミネートされた。
音楽面では、Boom Bapを土台にしながら、JazzやSoulの要素を取り込んだトラックが目立つ。リリックは社会問題、都市生活、個人の視点を扱うことが多く、Conscious Hip-Hopの文脈で語られることが多い。Neo Soul寄りの響きが入る曲もあり、ビートの作り方や声の置き方に幅がある。
Mos Defは音楽だけでなく、俳優としても活動している。『The Italian Job』『Be Kind Rewind』などの映画に出演し、『Cadillac Records』ではチャック・ベリーを演じた。HBO映画『Something the Lord Made』ではエミー賞にノミネートされている。音楽活動と並行して映像作品にも出てきた点が、この人物像を理解するうえで重要だ。
2011年9月には、Mos Defという名義を引退し、Yasiin Beyに改名すると発表した。本人は、この名前が人ではなく商品として扱われている感覚につながったと説明している。2019年の『Negus』は、物理盤や配信ではなくサウンド・インスタレーションとして発表された。
Mos Defの作品は、ジャズやソウルのサンプル感、硬めのドラム、言葉数の多いラップが組み合わさることが多い。Black StarでのTalib Kweliとの共作でも、その方向性ははっきりしている。単にラップがうまいというだけでなく、曲ごとにテーマの置き方が明確で、社会的な視点を持つ楽曲が多い。
また、警察の暴力や構造的な不平等に触れる活動家としての側面も知られている。音楽と発言が切り離されずに見られてきたアーティストだ。