Radiohead - Kid A (2000)
Radiohead 2000

Radiohead - Kid A (2000)

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Radiohead『Kid A』──ロックバンドの枠を外した2000年の転換点

Radioheadの『Kid A』は、2000年に発表された4作目のスタジオ・アルバムである。前作『OK Computer』で世界的な評価を得たあと、バンドはその延長線上ではない場所へ踏み込んだ。ギター主体のオルタナティブ・ロックを土台にしながら、電子音、ドラムマシン、断片化した構成、ジャズ由来の間合いまで取り込み、作品全体の重心を大きくずらしている。バンドの出身地はイングランドのオックスフォードシャー。90年代のギター・ロック文脈の中心にいたグループが、2000年にここまで音の作法を変えた事実自体が、この作品の位置をはっきり示している。

制作背景と録音の流れ

『Kid A』は、『OK Computer』期のツアーで消耗したThom Yorkeが、ロックバンドという形式そのものに強い違和感を抱いたところから生まれた。録音は1999年1月から2000年4月にかけて、パリ、コペンハーゲン、グロスターシャー、オックスフォードを移動しながら進められ、40曲以上が作られたという。その中から20曲が完成し、後に『Amnesiac』へ回された曲もある。制作の中心にはNigel Godrichがいて、Radioheadのサウンドを過度に整えるのではなく、断片や偶然性を活かす方向でまとめている。

当時のYorkeは、Warp Records周辺のAphex TwinやAutechreといったIDM/テクノ、さらにCharles Mingus、Alice Coltrane、Miles Davisらのジャズに強く影響を受けていた。作品にはその影響がそのまま出ていて、シンセサイザーやプログラムされたビート、Jonny Greenwoodのオンド・マルトノなどが前面に出る。90年代のオルタナティブ・ロックが持っていたギター中心の推進力とは別の方法で、曲が進んでいく構成である。

収録曲とアルバムの流れ

代表曲としてまず挙がるのは「Everything in Its Right Place」だろう。冒頭から歌詞、声、和音の位置関係がずれていて、アルバム全体の方針をそのまま示す導入になっている。続く「Kid A」も、タイトル曲らしい中心性を持ちながら、メロディを前に出しすぎず、音の塊そのものを聴かせる作りだ。「The National Anthem」では、低音の反復の上にブラスがぶつかるように入り、バンドの演奏感が別の形で立ち上がる。

「How to Disappear Completely」は、この作品の中でも比較的歌の輪郭が見えやすい曲で、静かな進行の中に不安感が残る。「Optimistic」や「In Limbo」では、バンドらしいバンド演奏の感触が戻る場面もあるが、従来のロックの快感には収まらない。「Idioteque」は本作の中でも特に知られた曲で、Oddyssey labelの音源からのサンプルを用いている。サンプル素材はPaul Lanskyの「Mild Und Leise」とArthur Kreigerの「Short Piece」で、権利面も明記されている。終盤の「Motion Picture Soundtrack」まで通して聴くと、アルバムは単なる実験集ではなく、曲ごとの温度差を並べた一つの流れとして機能している。

2000年当時の文脈

『Kid A』が出た2000年は、オルタナティブ・ロックの主流がまだ強く残っていた時期である。その中でRadioheadは、ギターバンドとしての期待を自分たちから外しにいった。プロモーションでもシングルや通常のミュージックビデオを前面に出さず、インタビューも最小限に抑え、代わりに短いアニメーション映像「blips」をネット上で展開した。ジャケットはStanley Donwoodとの共作で、雪山を思わせる図像が使われている。作品の外側まで含めて、従来のアルバム発売の流れから距離を取った形である。

その一方で、反応は大きかった。全米ビルボード200で初登場1位を記録し、Radioheadにとって初の快挙となった。発表当初は評価が割れたが、後年になるほど再評価が進み、2000年代を代表するアルバムとして語られることが増えた。グラミー賞では最優秀オルタナティブ・アルバム賞を受賞し、最優秀アルバム賞にもノミネートされている。

2016年盤について

ここでの盤は2016年のヨーロッパ盤で、XL Recordingsからのリリースである。ゲートフォールド・スリーブ仕様、印刷された内袋、MP3またはWAVのダウンロードカード付き。ラベル表記には「Made In The EU」、スリーブには「Printed In The EU」とある。オリジナルの2000年盤を基準にすると、内容そのものよりもパッケージ面の更新が目立つ再発盤で、手元で聴く際には当時のアルバムを新しい形で受け取るための版という位置づけになる。

まとめ

『Kid A』は、Radioheadが『OK Computer』で得た評価をそのまま繰り返さず、電子音楽やジャズの要素を吸収して新しいアルバムの形を作った作品である。Thom Yorkeの声、Jonny Greenwoodの音色処理、リズムの置き方、曲順の組み方まで含めて、ロックバンドのアルバムという枠に収まらない作りになっている。1990年代のギター・オルタナティブから、2000年代のエレクトロニック寄りの表現へ橋をかけた一枚として、今も明確な輪郭を持っている。

トラックリスト

  1. Alpha
  2. A1 Everything In Its Right Place 4:11
  3. A2 Kid A 4:44
  4. Beta
  5. B1 The National Anthem 5:52
  6. B2 How To Disappear Completely 5:56
  7. B3 Treefingers 3:43
  8. Gamma
  9. C1 Optimistic 5:16
  10. C2 In Limbo 3:31
  11. Delta
  12. D1 Idioteque 5:09
  13. D2 Morning Bell 4:36
  14. D3 Motion Picture Soundtrack 6:59

動画プレイリスト

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