Robert Fripp - God Save The Queen / Under Heavy Manners (1980)
Robert Fripp『God Save The Queen / Under Heavy Manners』
ロバート・フリップが1980年に発表した『God Save The Queen / Under Heavy Manners』は、フリッパートロニクスを軸にしたA面と、リズムを加えたB面を1枚にまとめた作品。タイトルどおり、同じ作品の中で性格の異なる2つの組み立てが並んでいるのが特徴だ。US盤はPolydorからのリリースで、ジャケット内袋付き。ラベル表記はA面が「SIDE A」、B面が「SIDE ONE (SIDE 1)」となっている。
制作背景・エピソード
この作品は、フリップが掲げた「Drive to 1981」の流れの中で構想されたものとされる。もともとは「フリッパートロニクス中心のアルバム」と「ディスコ的要素を加えたアルバム」を別々に出す計画だったが、最終的に1枚へまとめられた。結果として、A面は純粋なフリッパートロニクス、B面はそれにリズム隊を重ねた“Discotronics”という構成になった。
制作には、ボーカルでデヴィッド・バーン、ベースでマイケル“Busta Cherry”ジョーンズ、ドラムでポール・ダスキンが参加している。録音は1979年に複数の場所で行われ、ニューヨークのHit Factoryで編集・コンパイルされた。クレジットには、ヘア担当としてMary Lou Greenの名も見える。カバー写真はサンフランシスコのThe Handlery Motor Innの提供によるもの。US盤の一部には、裏ジャケットに金箔のプロモーション・スタンプが入ったものもある。
時代の文脈
1979年から80年にかけてのフリップは、キング・クリムゾン解体後のソロ活動の延長線上で、前衛的なギターループ表現と、当時のニューウェイヴやダンス感覚を接続しようとしていた時期にあたる。A面の静的で反復的な音像は、70年代末のミニマリズムや環境音楽の流れとつながり、B面の“Discotronics”は、ポストパンク以後のビート感覚を取り込んだ試みとして置かれている。
参加者の面でも、この作品は興味深い。デヴィッド・バーンの神経質で切迫した歌い方が曲に強い緊張感を与えたと評されており、同時代のトーキング・ヘッズ周辺との接点も見えてくる。フリップのキャリア全体で見ると、のちに再編されるキング・クリムゾンへ向かう過渡期の作品であり、実験の幅を広げた一枚として位置づけられる。
後世への影響
大きなヒット作ではないものの、後年の再発や再評価の中で、B面の“Discotronics”はプロト・マスロック的、あるいはポストパンクとダンス・ビートの接点として語られてきた。実験ロックや知性派ファンクの先駆として参照されることもあり、デヴィッド・バーン参加の事実も含めて、当時の周辺シーンをつなぐ記録として見られている。
当時の批評は割れていて、『Down Beat』はB面を「退屈なファンク」と切り捨てつつ、バーンの歌唱だけは強い魅力として挙げた。一方、『Musician』では、タイトル曲について重いリズムとフリップの反復ギターが噛み合い、そこにバーンのヴォーカルが異様な広がりを与えると評されている。チャート面では大きな実績は残していないが、2022年の再登場時にはUKインディペンデント・アルバム・チャートで最高42位を記録している。
トラックリスト
- A1 Red Two Scorer 6:54
- A2 God Save The Queen 9:50
- A3 1983 13:20
- B1 Under Heavy Manners 5:14
- B2 The Zero Of The Signified 12:38