Brian Eno - David Byrne - My Life In The Bush Of Ghosts (1981)
Brian Eno 1981

Brian Eno - David Byrne - My Life In The Bush Of Ghosts (1981)

Electronic Rock Funk / Soul Experimental Funk Avantgarde

Brian Eno – David Byrne『My Life In The Bush Of Ghosts』(1981)

Brian EnoとDavid Byrneによる『My Life In The Bush Of Ghosts』は、1981年にUSのSireから出たアルバムで、両者の名前が並ぶ共同作業の中でも特に重要な位置を占める作品だ。Brian EnoはRoxy Music以降、制作、実験、アンビエントの領域で活動を広げてきた人物で、David ByrneはTalking Headsの中心人物として知られる。本作はその二人が、ロック、ファンク、電子音響の枠をまたぎながら、ラジオ放送、説教、呼び込み、宗教音声、民族音楽の断片を組み合わせて作ったアルバムである。

録音は1979年から1980年にかけて進められ、Talking Headsの『Remain in Light』制作期とも重なる。実際、あの時期のByrne周辺で起きていたリズムの組み立て方、反復、異なる音源の重ね方が、この作品にもそのまま流れ込んでいる。とはいえ、単なる延長線上の作品ではない。ここでは歌そのものよりも、拾ってきた声や音の配置が前面に出る。デジタル・サンプラー以前の時代に、テープ編集でここまで大きくコラージュを組み立てた点が、まず目を引く。

音の作り方と聴こえ方

収録曲を通して聴くと、ビートの反復が軸にありつつ、その上に声の断片が差し込まれていく構造がはっきりしている。A面では、ラジオの怒り声、電話番組の会話、説教、悪魔祓いの声など、都市のノイズに近い素材が並ぶ。B面では、中東やアフリカ系の音声資料、合唱、宗教的な響きが加わり、音の由来がさらに広がる。A3やB3で使われるDunya Yusinの声、B1のコーラン詠唱、B2のThe Moving Star Hall Singersなど、素材の出自が明記されているのもこの作品の特徴だ。

聴感上は、ひとつの曲が「歌」より「場面」に近い。たとえば「The Jezebel Spirit」では、語りの断片とリズムがぶつかり合い、言葉の意味よりも声の圧力が残る。「Regiment」や「The Carrier」では、反復するリズムの上で、引用された声が曲の輪郭を決めていく。ロックの演奏盤というより、編集された音響作品としての性格が強い。

リリースまでの経緯と収録曲

このアルバムは発売前からブートレグが出回っていたことでも知られる。権利処理の遅れが背景にあったとされ、収録音源の扱いをめぐる調整が難航したことがうかがえる。マスターノートにもある通り、特定の声の差し替えが行われた曲もある。たとえば「The Jezebel Spirit」では別のラジオ伝道師の声が使われたという話が残る。

オリジナルのUS盤では「Qu'ran」が収録されているが、後年の英国再発盤の多くでは宗教上の理由からこの曲が外され、「Very, Very Hungry」が差し替えられた。初期のUS CD再発には両方入ったものもあった。こうした版の違いは、この作品が単なる音楽作品ではなく、引用元の意味や権利、宗教的配慮まで含めて扱われてきたことを示している。

1981年の位置づけ

1981年当時の大衆音楽の中で見ると、本作はかなり早い段階でサンプリング的手法を大きく押し出したアルバムだ。ヒップホップやエレクトロニカがまだ現在ほど制度化されていない時期に、既存音源の断片を組み替えて作品にしている点が大きい。後年には、Public Enemy周辺のThe Bomb Squad、Moby、Massive Attackのようなアーティストとのつながりが語られることも増えた。直接の模倣というより、音の拾い方と構成の発想に影響を与えた作品として見られている。

一方で、当時の受け止め方は現在ほど一枚岩ではなかったようだ。Rolling Stoneではテープ編集とリズムの工夫が高く評価されたが、発売直後に大きなヒット作として広く消費されたわけではない。むしろ時間がたつにつれて、この作品の作り方そのものが参照点になっていった。

まとめ

『My Life In The Bush Of Ghosts』は、Brian Enoの実験性とDavid Byrneのリズム感、そして引用素材を音楽の中心に置く発想が重なったアルバムだ。タイトルはアモス・トゥトゥオラの小説から取られている。USのSire盤は1981年の初出で、ラベル表記やプレス工場の違いを持つ個体もあるが、作品の核は変わらない。ロック、ファンク、電子音楽の境界をまたぎながら、声の断片を曲の推進力に変えた記録として、今も固い存在感を保っている。

トラックリスト

  1. A1 America Is Waiting 3:36
  2. A2 Mea Culpa 3:35
  3. A3 Regiment 3:56
  4. A4 Help Me Somebody 4:18
  5. A5 The Jezebel Spirit 4:55
  6. B1 Qu'ran 3:46
  7. B2 Moonlight In Glory 4:19
  8. B3 The Carrier 3:30
  9. B4 A Secret Life 2:30
  10. B5 Come With Us 2:38
  11. B6 Mountain Of Needles 2:35

動画プレイリスト

公開: 2026年8月
Share
戻る

あわせて聴きたい "Funk"

toast