Telex - Neurovision (1980)
Telex『Neurovision』
ベルギーの電子ポップ・トリオ、Telexが1980年にフランスのVogueから発表した2作目のアルバム。前年の『Looking For Saint Tropez』に続き、制作はバンド自身が担い、全編を電子楽器で組み立てている。収録曲には、ユーロビジョン本番に持ち込まれた「Euro-Vision」、Sly & The Family Stoneの「Dance To The Music」のカバー、Roberto Cacciapagliaの曲を取り上げた「My Time」などが並ぶ。
制作背景と収録時のエピソード
『Neurovision』の中心にあるのは「Euro-Vision」。この曲でTelexは1980年4月19日、オランダ・ハーグで開かれたユーロビジョン・ソング・コンテストにベルギー代表として出場した。きっかけはレコード会社RKMからの提案で、Michel Moersは当初は「バカげたアイデア」と感じていたが、2週間ほど考えた末に受け入れたという。ベルギー国内の予選では他の9組を破って代表に決まっている。
本番では、舞台上の演出にも制約があった。「聞こえる音はすべて目に見えなければならない」という規則がありながら、実際の音の多くはDan LacksmanのMoogモジュラーが担っていたため、演出側は「ドラマーのいないドラムの音」に難色を示した。さらに安全上の理由で舞台に電源を引けず、シーケンサーを動かせなかったため、Moersはボタンを押すふりを求められた。3人はタキシード姿で白いマフラーを振り、Marc Moulinはミニモーグを弾くまね、Moersは客席をカメラで撮影し、最後は紙吹雪が舞った。リハーサルもほとんどなく、Moersは本番で自分の歌もバックシンガーの声も聞こえなかったと語っている。Lacksmanは後年、最後の部分だけでもオーケストラを使えばよかったと悔いを口にしている。
「Euro-Vision」は、コンテストそのものを題材にした、意図的に陳腐な歌詞のエレクトロポップとして書かれている。ベルリンの壁やイタリア・リラの為替レートにも触れ、Moersは「一晩だけ国境が開く、その写真のようなもの」「シチュアシオニスト的な、リンゴの中の虫」と語っている。音楽面では、ユーロビジョンでおなじみの明るいハーモニーや転調、ベートーヴェン風の主題をなぞっているという。
収録曲と盤の特徴
アルバムでは、前作同様にカバーを含みつつ、オリジナル曲の比率が高くなっている。「Dance To The Music」は機械的なビートで再構築し、「Tour de France」はKraftwerkの同名曲より3年早い。ジャズの香りのするシャッフル調の「En Route Vers De Nouvelles Aventures」も収録されている。アナログ盤のB面最後の「Finale」はロックド・グルーヴで終わる。Telexは「スタジオで作るものだからコンサートはしない」(Lacksman)という姿勢で、これらの曲をライヴで演奏することはなかった。
このフランスVogue盤には「Grave et presse en France」「Version Française」の表記がある。なお、スリーヴ上の曲順は実際の収録順とは異なる。
時代の文脈
1980年前後は、Kraftwerk以後のシンセポップがヨーロッパで広がり始めた時期で、Telexはその初期を担ったグループのひとつとして扱われている。とはいえ、ユーロビジョン出場についてはMoersが後年、「キャリアにとって非常に悪い影響」を残したと話しており、ファンは戸惑い、ポルトガル以外では新しい聴衆も得られなかったという。
コンテスト本番の結果は19組中17位、14点。うち10点はポルトガルの審査員によるものだった。Moulinは「最下位を狙っていたのにポルトガルに阻まれた」と語ったとされ、Moersは「1位か最下位のどちらかを望んでいた」と補足している。舞台裏では、Moersが優勝者Johnny Loganに「君が勝つ」と声をかけ、Loganが「僕が勝てば僕にとって良いことだが、君たちが勝てば音楽にとって良いことだ」と返したというエピソードも残る。
後世への再評価
Telexは、テクノ、ハウス、シンセポップの先駆者として位置づけられ、顔を出さない匿名性も後のテクノ・アーティストと重ねて語られている。Classic Rock誌はTelexを「Kraftwerkとその後のEDMのほぼすべてをつなぐ重要な橋」と評した。2023年にはMute Recordsから、Dan LacksmanとMichel Moersがオリジナル・テープからリミックス/リマスターした再発盤が6枚組ボックスと単体で出ており、曲順の変更に加えて「Lakelele」「Soul Waves」の2曲が追加された。
評価は割れていて、The Electricity Clubは本作をバンドの不遜なユーモアと遊び心ある転覆志向が出たアルバムとし、「Dance To The Music」を「見事にメトロノーム的」と表現している。一方でTrouser Pressは辛辣で、「退屈なオリジナル曲」と記していた。Uncut誌は2023年のボックスに8/10を付け、活動当時のTelexは「おおむね誤解されていた」と書いている。
トラックリスト
- A1 We Are Getting Old 3:42
- A2 My Time 4:21
- A3 Tour de France 4:03
- A4 Euro-Vision 2:43
- A5 Plus de Distance 3:30
- B1 Dance To The Music 4:15
- B2 Réalité 3:30
- B3 Cliché 0:44
- B4 A/B 3:18
- B5 En Route Vers De Nouvelles Aventures 4:23
- B6 Finale 0:13