Midnight Magic - Free From Your Spell (2016)
Midnight Magic『Free From Your Spell』について
Midnight Magicの『Free From Your Spell』は、2016年にUSのSoul Clap Recordsから出た2作目のフルアルバムである。拠点はニューヨーク、より具体的にはブルックリンのディスコ/ファンク・シーンに根を持つグループで、9人編成ならではの厚みを持ちながら、打ち込みの感触も強いバンドとして知られている。電子音楽、ファンク、ソウル、ディスコの要素をまとめつつ、曲ごとの推進力を保ったままアルバム全体をつないでいく構成が特徴になっている。
Midnight Magicの中心には、Andrew RaposoとMorgan Wileyがいる。両者はかつてMidnight Sun Studiosを拠点に、LCD Soundsystem、The Juan Maclean、Hercules and Love AffairといったDFA周辺のアーティストの制作や演奏に関わってきた経歴を持つ。さらにRaposo、Wiley、Carter YasutakeはHercules and Love Affairのメンバーとしても活動していた。そうした背景を踏まえると、このバンドが単なるディスコ・リバイバルではなく、クラブの機能性とバンド演奏の熱量を同時に扱う位置にいることが見えてくる。
アルバムの位置づけ
本作は、2010年にドイツのPermanent Vacationから発表したシングル「Beam Me Up」で注目を集めてから、約6年後に出た2枚目の長編作品である。前作のセルフタイトル・アルバムから時間を置いての発表で、バンドの活動の蓄積がそのまま反映された一枚として扱える。レーベルはSoul Clap Records。ボストンを拠点にSoul Clapが運営する電子音楽レーベルで、ダンスミュージック寄りの感覚を軸にした作品と相性がよい。
タイトルの『Free From Your Spell』は、曲名としてもアルバム全体のムードとしても印象に残る。収録は「Walkup (Intro)」で始まり「Walkup (Outro)」で終わる構成で、単発の楽曲集というより、DJセットのように曲間が切れずに進行する作りになっている。各曲のつながりが意識されていて、途中で空気が断ち切られにくい。アルバムを通して聴くと、ビートの置き方やベースラインの動きが連続的に効いてくる。
サウンドの特徴
この作品でまず目立つのは、ファンクの跳ね方とディスコの推進力が、電子音の質感と一緒に組み立てられている点である。生楽器のグルーヴが前に出る場面でも、全体はクラブ向けの平衡感を保っている。9人編成のバンドだが、音数をただ増やす方向には寄っていない。むしろ、ハーモニー、ダブ的な処理、細かなテクスチャーの置き方によって、スペースを残したまま輪郭を作る感触が強い。
バンド自身は、このアルバムで宇宙的な領域をさらに掘り下げ、ハーモニーやダブ、テクスチャーを通じて多様なムードを探ったと説明している。一方で、ビートとベースラインのファンキーさは保ち、大所帯グループとしての音の余白も意識した、という制作意図が語られている。実際、作品全体には派手な展開よりも、反復の中で少しずつ色を変える作りが目立つ。Nu-Disco、Funk、Synth-pop、Electro、Acid Jazz、Disco、Italo-Discoといった要素が並ぶが、どれか一つに収まる感じではない。
同時代の文脈
Midnight Magicの音は、Hercules and Love Affairや、DFA周辺のプロダクションに通じる空気を持っている。ディスコを単なる懐古として扱わず、ベースの押し出しやシンセの配置で現在形に引き戻すやり方である。後期ZE Recordsのプロジェクトを思わせるという評価もあり、80年代のダンスミュージックの輪郭を借りながら、現代のバンド編成に移し替える作業が見える。
ただし、本作は引用の強さだけで押し切るタイプではない。クラブで機能する直線性と、バンドとしての演奏の揺れが同居していて、そこにMidnight Magicらしさが出ている。アーティストのプロフィールにあるElectro/Funk/Disco/Houseという並びも、この作品ではそのまま実感しやすい。ハウスの反復、ディスコの高揚、ファンクの間合いが、曲ごとに少しずつ比重を変えながら続いていく。
まとめ
『Free From Your Spell』は、Midnight Magicが持つクラブ感覚とバンド感覚を、アルバム単位でまとめた作品である。2016年時点のニューヨーク・ディスコ/ファンクの空気、DFA周辺の制作背景、Soul Clap Recordsのダンス寄りの文脈が重なり、単なる復古ではない形でまとまっている。代表曲としては、初期の注目を集めた「Beam Me Up」がグループの入口として知られる一方、本作ではアルバム全体の流れそのものが重要になっている。曲単位で切り出すより、通して聴いたときの連続性に輪郭が出る一枚である。
トラックリスト
- A1 Walkup (Intro) 0:40
- A2 I Gotta Feeling 5:44
- A3 Malibu Fun 4:57
- A4 Dark Thunder 4:36
- A5 Black Cherry 7:15
- B1 Down Delay 4:42
- B2 Own Me 3:53
- B3 Free From Your Spell 4:36
- B4 Sea Of Love 5:19
- B5 Bad Foot 3:24
- B6 Walkup (Outro) 2:01