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Zenit(ゼニット)は、1976年にオーストリア東部の古都クレムスで結成されたジャズ・ロック/フュージョン/エレクトロ・ファンク・バンドだ。ヨーロッパ屈指の技巧派ミュージシャンたちが集い、1970年代後半のプログレッシブなジャズ・ロックから、1980年代の先鋭的なシンセ・ブギー/コズミック・ディスコへと進化を遂げたオーストリアン・レア・グルーヴの至宝である。
キーボード奏者のハネス・トレイバー(Hannes Treiber)と、後にCount Basicやハリー・ストイカ・エクスプレス、さらには数々のオーストロポップ名盤を支える名ベーシストのヴィリ・ランガー(Willi Langer)が中心となって結成された。
バンドにはトーマス・ツェッヒ(Thomas Zech / ギター)、トーマス・シュヴェビッシュ(Thomas Schwebisch / サックス、フルート)、ギュンター・フリードリヒ(Gunter Friedrich / ドラムス)らが参加。さらに、アメリカ出身の伝説的アヴァンギャルド/フリー・ジャズ・シンガーであるリンダ・シャーロック(Linda Sharrock)をゲスト・ヴォーカルに迎えるなど、国境を越えた高い音楽性を誇った。
1981年に発表されたデビュー・アルバム『Stimmungswechsel』は、自主制作からWEA配給へとステップアップを果たし、タイトな変拍子と骨太なスラップ・ベースが冴え渡るテクニカルなジャズ・ロック/ファンクとしてシーンの注目を浴びた。続く『Crazy Mama』(1983年)を経て、1986年にインディー・レーベルSpray Recordsからリリースされたサード・アルバム『Straight Ahead』において、バンドは音楽的絶頂を迎えた。
『Straight Ahead』では、従来の緻密なフュージョンのアンサンブルに、最先端のデジタル・シンセサイザーやドラムマシン、そして洗練されたアーバン・ブギーの意匠を大胆に導入した。硬質なリズムと空間的な音響処理が融合したそのサウンドは、同時代のヨーロッパの音源の中でも際立った完成度を誇る。
アルバムの白眉である「Waitin'」は、リンダ・シャーロックの官能的なヴォーカルと、ゆったりと沈み込むようなスローモーション・ブギーのビートが交錯する奇跡的な名曲だ。2010年代以降、バレアリック、コズミック・ディスコ、そしてモダン・ファンクの文脈で世界のトップDJたちにプレイされ、爆発的なカルト・ヒットとなった。
ウィーンの気鋭レーベルEdition Hawaraや日本のP-Vineから公式リイシューされたことで、その真価は世界中で再認識された。確かな演奏技術に裏打ちされたグルーヴと、80年代中葉の耽美的なシンセ・サウンドが結実した傑作を残したグループとして、今なお世界中のディガーから熱いまなざしを浴び続けている。