Vinyl Record Reviews
Banda Black Rio(バンダ・ブラック・リオ)は、1976年にブラジル・リオデジャネイロで結成されたインストゥルメンタル・サンバ・ファンク/ジャズ・フュージョン・バンド。1970年代半ば、リオの郊外(サバーブ)やファヴェーラでアフロ・ブラジル系の若者たちがブラック・プライドと連帯を掲げて熱狂したダンス・パーティー文化「モヴィメント・ブラック・リオ(Black Rio運動)」の音楽的象徴として誕生した伝説的グループである。
中心人物はサックス奏者兼アレンジャーのオベルダン・マガリャンイス(Oberdan Magalhães)。彼のもとにジャミル・ジョアネス(ベース)、クラウディオ・スティーヴンソン(ギター)、クリストヴァン・バストス(キーボード)、ルイス・カルロス・サントス(ドラムス)ら、ティム・マイアやドン・サルヴァドールとの共演で腕を磨いた屈指のミュージシャンたちが集結した。
当時のブラジルは軍事独裁政権下にあり、リオデジャネイロの若者たちは週末ごとに大規模なソウル・ダンス・パーティー(バイリ・ソウル)に集い、ジェームス・ブラウンやスライ&ザ・ファミリー・ストーンらの米国のブラック・ミュージックに自由と誇りを見出していた。保守層や当局から「外来文化への盲従」と批判されるなか、Banda Black Rioは米国の洗練されたファンク/ソウルと、ブラジル固有のサンバやバイオォン、ショーロのポリリズムを完璧に融合させ、ブラジル独自の黒人音楽の金字塔を打ち立てた。
1977年にWEA(Atlantic)から発表されたデビュー・アルバム『Maria Fumaça(マリア・フマーサ)』は、ブラジル音楽史のみならず世界的なレア・グルーヴ史に輝く傑作である。表題曲「Maria Fumaça」は大手テレビ局グローボの連続ドラマ主題歌に起用されて全国的ヒットを記録した。
本作では、オリジナル曲の「Mr. Funky Samba」に加え、エドゥ・ロボの「Casa Forte」やアリ・バローゾの「Na Baixa do Sapateiro」、ルイス・ゴンザーガの「Baião」といったブラジルの名曲を、唸るスラップ・ベースと鋭利なギター・カッティング、そして圧巻のホーン・セクションによる強烈なファンク・アンサンブルへと換骨奪胎した。続く『Gafieira Universal』(1978年)や『Saci Pererê』(1980年)でも高度な演奏を披露し、1978年にはMPBの巨匠カエターノ・ヴェローゾとの歴史的共演ライブ『Bicho Baile Show』も敢行した。
1984年にリーダーのオベルダンが37歳で自動車事故により急逝したことでバンドは活動を停止したが、1990年代に入ると英国のアシッド・ジャズ・シーン(インコグニート、ブラン・ニュー・ヘヴィーズ等)や世界的DJのジャイルス・ピーターソンらによって世界的な再評価の嵐が巻き起こった。
1999年には、オベルダンの実子であるキーボード奏者ウィリアム・マガリャンイス(William Magalhães)がバンドを再始動。英名門レーベルFar Out Recordings等からのリリースを通じて、アフロ・ブラジリアン・ファンクの熱き魂を21世紀のダンスフロアへと受け継ぎ続けている。