Vinyl Record Reviews
Dee Gees(ディー・ジーズ)は、アメリカ屈指のスタジアム・ロック・バンドであるフー・ファイターズ(Foo Fighters)のメンバー全員による、ディスコ/ビージーズ(Bee Gees)トリビュート・オルターエゴ(別名義プロジェクト)。メンバーはデイヴ・グロール(ボーカル、ギター)、テイラー・ホーキンス(ドラムス)、ネイト・メンデル(ベース)、クリス・シフレット(ギター)、パット・スミア(ギター)、ラミ・ジャフィー(キーボード)の6人。グループ名は敬愛するBee Geesと、デイヴ・グロールのイニシャル「D.G.」を掛け合わせたものである。
プロジェクトの発端は、デイヴ・グロールがビージーズのドキュメンタリー映画を鑑賞した直後、英BBC Radio 2の番組セッションのために「You Should Be Dancing」のカバーを即興で試みたことに始まる。人生で初めて本格的な裏声(ファルセット)歌唱に挑戦したグロールは、驚くほどの手応えと高揚感を得たことでバンドメンバーに声をかけ、本格的なディスコ・カバー作品の制作へと発展していった。
2021年7月17日の「レコード・ストア・デイ(Record Store Day)」限定企画として、スタジオ/ライブ・アルバム『Hail Satin』がアナログLPでリリースされた。アルバム・タイトルは、70年代ディスコのアイコンである艶やかな生地「サテン(Satin)」と、「ヘイル・サタン(悪魔万歳)」をもじった痛快なユーモアが込められている。
本作のA面には、ビージーズおよびアンディ・ギブによる珠玉のディスコ・クラシック5曲が収録された。
グロールが「過去25年間ずっとこの声で歌っていればよかった」と冗談めかして語るほど見事なハイトーン・ファルセットを中心に、ラミ・ジャフィーのきらびやかなエレピやストリングス系シンセ、そしてバンドならではの分厚くドライブ感あふれるリズム隊が完璧なディスコ・グルーヴを紡ぎ出している。一方のB面には、フー・ファイターズのアルバム『Medicine at Midnight』収録曲のタイトなスタジオ・ライブ演奏が収められ、彼らの現在地と多面性を示す構成となった。
『Hail Satin』は単なるパロディ企画にとどまらない圧倒的な演奏力と楽曲への深いリスペクトが絶賛され、世界中のレコードショップで即完売を記録した。
さらに本作は、2022年3月に50歳で急逝した稀代のドラマー、テイラー・ホーキンスが生前に残した貴重な録音のひとつとしても特別な意味を持つ。ディスコのタイトな四つ打ちビートとしなやかなグルーヴを完璧に叩きこなすホーキンスのドラミングは、彼の比類なき才能を今なお鮮烈に伝えている。世界最高峰のロック・バンドが放った、最高にスリリングで愛に満ちたディスコ・トリビュートである。