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Engelbert Humperdinck(エンゲルベルト・フンパーディンク)は、1936年5月2日生まれのイギリスのポップ・シンガー。本名はアーノルド・ジョージ・ドーシーで、英領インドのマドラス(現在のチェンナイ)に生まれた。戦後に家族とともに英国レスターへ移住し、17歳から本名名義で歌手活動をスタートさせた。
長年の下積みを経て、1960年代後半に現在の芸名へと改名したことで大きな脚光を浴びる。芸名は、歌劇『ヘンゼルとグレーテル』で知られる19世紀ドイツのオペラ作曲家エンゲルベルト・フンパーディンクに由来し、強烈なインパクトを与えるために採用されたものだった。
キャリアの決定的な転機となったのは、トム・ジョーンズのマネージャーとして知られる名プロデューサー、ゴードン・ミルズとの出会いだった。ミルズの助言を受けて改名したのち、1967年初頭に発表した「Release Me(リリース・ミー)」が英人気テレビ番組への出演を機に爆発的なヒットを記録。全英チャートで6週連続1位を獲得し、同年の年間最多売上シングルとなった。
この「Release Me」は、当時ビートルズの最高傑作シングルと名高い「Strawberry Fields Forever / Penny Lane」の首位獲得を阻止し、全英2位に留まらせたエピソードでも英ポップス史上に語り継がれている。
勢いに乗った彼は、同年に「There Goes My Everything」が全英2位、「The Last Waltz(ラスト・ワルツ)」が全英1位と立て続けにメガヒットを連発。翌1968年には「A Man Without Love」を発表し、1976年には「After the Lovin'」で全米トップ10入りを果たすなど、大人のためのロマンティックなポップ・バラードの王者として君臨した。全世界でのレコード売上は1億4000万枚を超えている。
彼の音楽の核にあるのは、艶やかで豊かな声量を誇るバリトン・ボイスだ。甘いマスクと包容力ある歌声から「キング・オブ・ロマンス」の愛称で親しまれ、メロディを伸びやかに歌い上げるボーカル・スタイルで世界中の聴衆を魅了した。ポップスを基盤にしつつ、カントリー調の哀愁や洗練されたイージーリスニングの要素を巧みに取り入れた名唱の数々は、今なお色褪せない魅力を放っている。