Engelbert Humperdinck - A Man Without Love (1968)
Engelbert Humperdinck『A Man Without Love』
1968年7月に発表されたエンゲルベルト・フンパーディンク(Engelbert Humperdinck)のサード・アルバム『A Man Without Love』(邦題『愛の花咲くとき』)。前年1967年に「Release Me」の大ヒット(ザ・ビートルズ「Penny Lane」の全英1位を阻んだことでも知られる)で世界的なスターダムに駆け上がったフンパーディンクが、その勢いを決定づけた一枚である。US盤はロンドン・レコード傘下のパロット(Parrot / PAS 71022)からリリースされた。
制作背景・エピソード
制作陣には、プロデューサーのピーター・サリヴァンとエンジニアのビル・プライスのもと、チャールズ・ブラックウェル、ジョニー・ハリス、アーサー・グリーンスレイド、シド・デイルといった英国の一流アレンジャー陣が集結。重厚で洗練されたオーケストレーションが施されている。
表題曲「A Man Without Love」は、同年のサンレモ音楽祭で発表されたイタリアの楽曲「Quando m'innamoro」(ロベルト・リヴラギ、ダニエレ・パーチェ、マリオ・パンツェーリ作曲)に、バリー・メイソンが英詞を付けたもの。地中海的な哀愁を帯びたキャッチーなメロディに乗せて、フンパーディンクの豊潤なバリトン・ボイスとサビでの情熱的な高音へのクレッシェンドが圧倒的なスケール感を生み出している。
収録曲にはほかに、フランキー・ヴァリの「Can't Take My Eyes Off You」(『君の瞳に恋してる』)、ジミー・ウェッブ作の「Up, Up And Away」や「By The Time I Get To Phoenix」、ルイ・アームストロングで知られる「What A Wonderful World」、映画音楽「A Man And A Woman」などが並び、同時代の上質なポップ・スタンダードを端正なクルーナー・スタイルで網羅している。
時代の文脈
1968年の英米音楽シーンはサイケデリック・ロックやカウンターカルチャーの熱狂の中にあったが、フンパーディンクは同門のトム・ジョーンズとともに、大人のリスナー層を惹きつける正統派ポピュラー・ボーカルの砦として絶大な人気を博した。壮麗なストリングスと華やかなブラス・セクションに支えられたドラマティックなバラードは、激動の時代において幅広い大衆の支持を獲得した。
表題曲「A Man Without Love」は全英2位、アイルランドやスイスのチャートで1位を獲得し、米ビルボードHot 100でも19位(イージーリスニング・チャート3位)を記録する世界的な大ヒットとなった。アルバム自体も全英アルバム・チャートで最高3位(45週チャートイン)、米ビルボード200で最高12位に達している。
後世への影響
リリースから半世紀以上を経た2022年、マーベル・スタジオのMCUドラマシリーズ『ムーンナイト(Moon Knight)』第1話のオープニング曲として「A Man Without Love」が抜擢。主人公スティーヴン・グラントの日常を描くシーンで繰り返し流れたことを機に世界的なリバイバルヒットとなり、Spotifyのグローバル/USバイラルチャートでトップ5入り、Shazamチャートで全米1位を記録するなど、若い世代を中心に劇的な再評価を巻き起こした。
トラックリスト
- A1 A Man Without Love 2:17
- A2 Can't Take My Eyes Off You 3:33
- A3 From Here To Eternity 3:47
- A4 Spanish Eyes 3:05
- A5 A Man And A Woman 3:33
- A6 Quando Quando Quando 3:18
- B1 Up, Up And Away 2:31
- B2 Wonderland By Night 2:57
- B3 What A Wonderful World 2:42
- B4 Call On Me 2:45
- B5 By The Time I Get To Phoenix 3:03
- B6 The Shadow Of Your Smile 2:30