Vinyl Record Reviews
Harvey Mandel(ハーヴィー・マンデル)は、1945年3月11日ミシガン州デトロイト生まれ、シカゴ育ちのアメリカのギタリスト。ブルース・ロックを基軸にしながら、ジャズ、サイケデリック、ファンクを縦横無尽に横断する独自のインストゥルメンタル・サウンドを開拓した。20歳にしてすでにプロとして頭角を現し、Charlie Musselwhite、Canned Heat、John Mayall、The Rolling Stonesといった伝説的アーティスト/バンドの重要局面で強烈な存在感を放ってきた。
マンデルは活気あふれるシカゴのエレクトリック・ブルース・シーンで腕を磨いた。1966年にはCharlie Musselwhiteの伝説的デビュー作『Stand Back! Here Comes Charley Musselwhite's Southside Band』に参加し、マイク・ブルームフィールドらと並び白人ブルース・ギタリストの新世代として脚光を浴びる。
その後ソロへと舵を切り、1968年に記念すべきソロ・デビュー・アルバム『Cristo Redentor』を発表した。Duke Pearsonのジャズ名曲を取り上げたタイトル曲をはじめ、深いサステインと哀愁あふれる旋律、ラテンやサイケデリックの音響処理を融合させたインストゥルメンタル・ロックの金字塔として今なお高く評価されている。
1969年の『Righteous』、1970年の『Games Guitars Play』、ファンク色を色濃く反映させた1971年の『Baby Batter』、1972年の『The Snake』など、1970年代前半にかけて意欲的なソロ作品を立て続けにリリース。作品ごとにブルース、ファンク、ジャズ・フュージョンの配合を巧みに変化させ、インストゥルメンタル・ミュージックの可能性を押し広げた。
特に1973年のアルバム『Shangrenade』では、両手タッピング(ツーハンド・タッピング)奏法を全面的にフィーチャーした演奏を展開。Eddie Van Halenが世界的に普及させる何年も前にこの奏法を実践し、高度な音楽的表現へと昇華させていた先駆者として、ギター奏法史にその名を刻んでいる。
マンデルはCharlie Musselwhiteから「The Snake(ザ・スネーク)」というニックネームを与えられた。これは指板の上を蛇のように滑らかに這う独自の運指スタイルに由来する。音と音の滑らかな連結、息の長いレガート奏法、そして制御されたロング・サステインとフィードバックの扱いは彼の代名詞であり、ジェフ・ベックらと同等の独創的なトーン・コントロールを誇る。
1969年、ヘンリー・ヴェスティーヌの後任としてCanned Heatに電撃加入し、伝説の「ウッドストック・フェスティバル」に出演。その後はJohn Mayallのバンドに加わり、ヴァイオリン奏者Sugarcane Harrisらとともに録音したドラムレスの名盤『USA Union』(1970年)や『Back to the Roots』(1971年)で唯一無二のアンサンブルを構築した。
1974年には、Mick Taylor脱退後のThe Rolling Stonesの後任ギタリスト・オーディションに招聘される。最終的に正式加入したのはRon Woodだったが、マンデルの演奏は1976年の名盤『Black and Blue』に収録された「Hot Stuff」と「Memory Motel」で聴くことができる。同世代のトップ・ミュージシャンたちがこぞってその腕前とオリジナリティに絶大な信頼を寄せていた証左といえる。
両手タッピング奏法の実践をはじめ、ブルースの情念とアヴァンギャルドな音響美を同居させたマンデルの演奏スタイルは、後進のロック・ギタリストたちに計り知れない影響を与えた。大きな病を乗り越えながら現在も演奏活動を継続しており、エレクトリック・ギターの表現領域を拡張し続けた孤高のイノベーターとして敬意を集めている。