Vinyl Record Reviews
Eugene McDaniels(ジーン・マクダニエルズ)は、1935年にカンザス州カンザスシティで生まれたアメリカのシンガー/ソングライター/プロデューサーです。カンザス州で生まれ、ネブラスカ州オマハで育ち、教会でゴスペルを歌いながら音楽に親しみました。オマハ大学の音楽院で学び、サックスやトランペットも演奏していたので、歌手としてだけでなく、器楽や編曲の感覚も持った人物です。
1970年までは主にGene McDaniels名義で作品を発表し、Atlantic Recordsと契約した以降はフルネームのEugene McDanielsを使いました。2011年7月29日、メイン州の自宅で76歳で亡くなっています。
1960年代初頭は、Liberty Recordsからシングルを立て続けに送り出しました。プロデューサーのスナッフ・ギャレットと組んだ「A Hundred Pounds of Clay」は1961年にBillboard Hot 100で3位を記録し、ゴールドディスクにもなっています。
同じく1961年には、バート・バカラックとの共作「Tower of Strength」が5位を記録しました。ほかにも「Chip Chip」(10位)、「Point of No Return」(1962年、21位)など、ポップ・シンガーとしてチャート入りの実績を重ねています。映画『It's Trad, Dad!』(1962年)にも出演しました。
ブリティッシュ・インヴェイジョン以降は、ポップ・シンガーとしての人気は落ちていきます。その後、1968年ごろからはデンマークやスウェーデンに拠点を移し、作曲活動へ比重を移しました。
作曲家として広く知られているのが、反戦や社会批判の色合いを持つ「Compared to What」です。レス・マッキャンとエディ・ハリスの演奏で知られ、レイ・チャールズやロバータ・フラックなどもカヴァーしています。もうひとつの代表曲が、ロバータ・フラックの1974年の全米1位曲「Feel Like Makin' Love」で、こちらはグラミー賞ノミネートにもつながりました。
1970年にAtlantic Recordsと契約してからは、Eugene McDaniels名義で活動します。この時期のアルバムは『Outlaw』(1970年)と『Headless Heroes of the Apocalypse』(1971年)の2作がよく知られています。制作にはジョエル・ドーンが関わっています。
この時期の音楽は、ソウル、ファンク、フォーク・ロック、ジャズを混ぜた構成で、政治的な主題を前面に出しています。とくに『Headless Heroes of the Apocalypse』は、当時の副大統領スピロ・アグニューがAtlanticに抗議し、レーベルのプロモーションが止まったという話が残っています。商業面では大きな成功にはつながりませんでしたが、のちに再評価が進みました。
Eugene McDanielsの作品は、その後レア・グルーヴやヒップホップの文脈で注目されるようになります。A Tribe Called Questは「Jagger the Dagger」をサンプリングし、Beastie Boysも彼の音源を取り上げました。こうした使われ方からも、70年代初頭の録音が今の耳でも参照されていることがわかります。
晩年には、ゲーム『League of Legends』でキャラクターNasusの声も担当しています。音楽家としてだけでなく、声の仕事まで含めて活動の幅があった人物です。
Gene McDanielsとしてのヒットメーカー期と、Eugene McDanielsとしての政治性の強い作家期で、活動の印象がかなり変わるアーティストです。シングルのヒット、重要曲の提供、そして後年のサンプリング源としての存在感まで含めて、長く追いかける価値のある人です。