Vinyl Record Reviews
K.I.D.(ケイ・アイ・ディー)は、1980年代初頭のポスト・ディスコ/エレクトロ・ブギーを象徴するスタジオ・プロジェクト。中心人物は、イギリス・ヨークシャー出身で西ドイツ・ミュンヘンを拠点に活動した作曲家/鍵盤奏者ジェフ・バストウ(Geoff Bastow、1949〜2007年)。ジョルジオ・モロダーやキース・フォーシィらとともに「ミュンヘン・サウンド」を築き上げたバストウが、パトリック・ギャモン、パトリシア・ショックリー、キャシー・バートニーら実力派ボーカリストを迎えて立ち上げた。
ジェフ・バストウは1970年代からヨーロッパのディスコ/ポップス・シーンで数多くの作編曲を手掛け、名門Bruton MusicやSonotonなどでライブラリー・ミュージックの傑作を数多く残した奇才である。彼が持つ最先端のシンセサイザー技術と、ヨーロッパの洗練されたダンス・ビートのノウハウを凝縮して始動したのがK.I.D.であった。
スタジオ制作に特化したユニットとして、タイトなシーケンサー・ビートと強力なブラック・ボーカルを融合させたサウンドは、当時のディスコ・シーンにおいて際立ったモダンさを放っていた。
1981年、イタリアのBaby Recordsおよび米国の重要ダンス・レーベルSam Recordsからファースト・アルバム『Fine Music, Vol. 1』を発表。シングル「Don't Stop」は、シンセサイザーによる疾走感あふれるアルペジオ・ベースとエレクトリックなボコーダー、そしてタイトなファンク・グルーヴがフロアを直撃し、米Billboardダンス/ディスコ・チャートで最高2位を記録する大ヒットとなった。
さらに、スワヒリ語のフレーズを大胆に取り入れたエキゾチックなエレクトロ・ファンク「Hupendi Muziki Wangu?! (You Don't Like My Music)」や、「I Wanna Piece of the Action」など、斬新なアイデアとフロア対応力を兼ね備えた名曲を次々に送り出した。
ミュンヘン発のエレクトロニックなシンセ・ディスコと、ニューヨークのアーバンなブギー/R&Bが完璧に結実したK.I.D.のサウンドは、Paradise Garageのラリー・レヴァンをはじめとする当時のトップDJたちにヘヴィ・プレイされ、ガラージ・クラシックとしての不動の地位を確立した。
80年代初頭のユーロ・ディスコから初期シカゴ・ハウス、エレクトロ・ファンクへと至るダンス・ミュージックの進化の架け橋となった重要プロジェクトとして、現在もクラブDJやコレクターから絶大な支持を集めている。