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Cassiano(カッシーアーノ、本名:Genival Cassiano dos Santos、1943年9月16日〜2021年5月7日)は、ブラジル・パライバ州カンピナ・グランデ出身のシンガー・ソングライター、ギタリストだ。ティム・マイア(Tim Maia)、イー・サン・チーノ(Hyldon)と並び「ブラジリアン・ソウルの三巨頭」と称され、ブラジルにおけるソウル/ファンク・ムーヴメントを切り拓いた最大のゴッドファーザーである。
1960年代、カッシーアーノはヴォーカル・グループ「Os Diagonais」を結成して音楽キャリアをスタートさせた。ドゥーワップや初期モータウンの影響を色濃く宿したコーラス・ワークとギター・プレイで頭角を現した。
彼の名を音楽史に決定づけたのが、1970年の盟友ティム・マイアのデビュー・アルバム『Tim Maia』への参加だ。カッシーアーノが提供した「Primavera (Vai Chuva)」と「Eu Amo Você」の2曲は、ブラジル全土で爆発的なヒットを記録。それまでボサノヴァやトロピカリアが席巻していたブラジル音楽界に、本格的なブラック・ミュージック/ソウル・ブームの扉を力強く押し開いた。
ソロ・アーティストとしても傑作を次々と送り出した。1971年のデビュー作『Imagem e Som』、1973年の『Apresentamos Nosso Cassiano』を経て、1976年に発表したサード・アルバム『Cuban Soul: 18 Kilates』は、ブラジリアン・ソウル/メロウ・ファンク史上の最高峰に君臨する歴史的大名盤だ。
本作に収録された「A Lua e Eu」や「Coleção」は、ヘジ・グローボ社の国民的テレビドラマ(テレノベラ)の主題歌・挿入歌に起用され、ブラジル中で大ヒットを記録した。艶やかなファルセット・ヴォーカル、卓越したギター・カッティング、そして洗練されたホーンとストリングスが織りなすグルーヴは、今なお色褪せない輝きを放っている。
カッシーアーノのサウンドの核心は、アメリカのフィリー・ソウルやスタックス、モータウンからの影響を忠実に消化しつつ、ブラジル人特有のサウダージ(切ない哀愁の感情)とボサノヴァ由来のテンション・コードを融合させた点にある。甘美でありながら骨太なファンクのリズムが、彼の楽曲を唯一無二の存在へと昇華させている。
マリサ・モンテ、ジャヴァン、クラウディオ・ゾリ、エヂ・モッタといった後続のMPBトップ・シンガーたちから深く敬愛され、Racionais MC'sをはじめとする現代のブラジリアン・ヒップホップ勢からもサンプリングの源泉として熱狂的に参照され続けている。ブラジル音楽がソウルとファンクを血肉化していく過程において、常にその頂点に立ち続けた偉大なイノベーターである。