Vinyl Record Reviews
Vent D'Estは、フランス東部ストラスブール出身のプログレッシヴ・ロック・バンドだ。メンバーは、Jean-Luc Wysocki(エレクトリック・ギター、ギター・シンセ、ヴォーカル)、Christian Devot(アコースティック・ギター、ヴォーカル)、Jean-Luc Siegler(フレットレス・ベース)、Jean-Marc Fischer(ドラムス)、Patrice Witt(キーボード、シンセサイザー、ピアノ)の5人で構成されている。
確認できる作品は、1980年にMusic'All(Müsic'Al)レーベルから発表されたセルフタイトル作『Vent d'Est』のみだ。バンドのディスコグラフィーとしてはこの1枚が知られている。
1980年は、パンクの動きが広がった後の時期にあたる。そのタイミングでプログレッシヴ・ロックのアルバムを出している点は、このバンドの立ち位置を考えるうえで重要だ。
Vent D'Estのサウンドは、長めのギターソロを前面に置きつつ、ギターとキーボードの掛け合いも目立つ構成になっている。曲によってはジャズ・ロックとポップの境界に入るような場面もあり、歌ものとインストゥルメンタルの両方が並ぶ。
歌ものでは、凝ったテーマを持つ楽曲が中心になっている。インストゥルメンタル曲では、ギターとキーボードの応酬が聴きどころになっている。
フランスのロック百科サイトRock Made in Franceでは、Vent D'Estの音楽性はフランスのプログレ・バンドであるAtollとCortexの中間に位置づけられている。そこでは、当時らしさのある音ではあるものの、同時期に出た多くのレコードよりも楽しく聴ける作品として扱われている。
この評価からは、Vent D'Estがフランスのプログレの文脈の中で聴かれていることがわかる。AtollやCortexの名前が挙がっているので、メロディ、演奏の密度、ジャズ・ロック寄りの感触をまたぐバンドとして受け止められているようだ。
『Vent d'Est』を聴くなら、まずはギターとキーボードのやり取りに注目したい。さらに、フレットレス・ベースの動きや、歌ものとインスト曲の切り替わりもこのバンドの特徴として追いやすい。
1980年の作品として見ると、プログレッシヴ・ロックの要素を保ちながら、時代の空気も入っている。そこがVent D'Estの面白さになっている。