Bob Dylan - The Times They Are A-Changin' (1964)
Bob Dylan『The Times They Are A-Changin'』
ボブ・ディランが1964年に発表した通算3作目のスタジオ・アルバム『The Times They Are A-Changin'(時代は変る)』。全収録曲がディラン自身のペンによるオリジナル曲で占められた初の作品であり、プロテスト・フォークの最高峰としてポピュラー音楽史にそびえ立つ記念碑的傑作である。本盤は1964年リリースの貴重なUKオリジナル・モノラル盤(CBS BPG 62251)である。
制作背景・エピソード
録音は1963年8月から10月にかけて、ニューヨークの名門コロンビア・30丁目スタジオにて名匠トム・ウィルソンのプロデュースのもとで行われた。当時激動の渦中にあった人種差別、公民権運動、貧困、国家の欺瞞といった社会の暗部にディランの峻烈な眼差しが向けられている。
黒人公民権活動家メドガー・エヴァーズ暗殺事件の深層を鋭く突いた「Only A Pawn In Their Game」や、富裕層の白人青年による黒人女性暴行殺人事件の実話を描いた告発歌「The Lonesome Death Of Hattie Carroll」、旱魃に苦しむ極貧農民の悲劇を冷徹に描写した「Ballad Of Hollis Brown」、愛国主義の偽善を暴く「With God On Our Side」など、アコースティック・ギター1本とハーモニカのみを武器に、言葉の切迫感と叙事詩的リアリズムが極限まで高められている。
時代の文脈
表題曲「The Times They Are A-Changin'」は、古い体制の終焉と若者世代による新しい時代の到来を高らかに宣言し、1960年代の公民権運動やカウンターカルチャー運動を牽引する絶対的なアンセムとなった。
その一方で、旅立ちと別れの痛みを静かに歌い上げた「One Too Many Mornings」や、切々たる恋人への手紙のような「Boots Of Spanish Leather」など、内省的で繊細な抒情詩が同居している点も見逃せない。告発者としての厳格さと詩人としての陰影が絶妙なバランスで結実した本作を頂点として、ディランはこの後『Another Side of Bob Dylan』を経てエレクトリック・ロック革命へと突き進むこととなる。
後世への影響
音楽が直接的に社会変革の旗印となり得ることを証明した本作は、ピーター・ポール&マリー、ザ・バーズ、ニーナ・シモンをはじめ数多のアーティストに歌い継がれ、ロック/フォーク界に計り知れない衝撃を与えた。のちに2016年にシンガーソングライターとして史上初めてノーベル文学賞を受賞するボブ・ディランの、言葉の力と文学的深度を世界に知らしめた原点である。
盤について
1964年リリースのUKオリジナル・モノラル盤(CBS BPG 62251)。英フィリップス受託プレスによる、初期仕様特有のざらざらとした手触りを持つテクスチャード・オレンジ・ラベル(Rough-textured orange CBS label)仕様である。
ジャケットは表面に光沢ラミネートが施された英国伝統の3面折り返し(フリップバック)スリーブ。マトリクスはマシン刻印。アコースティック・ギターの鋭いカッティング、鋭角的に響くハーモニカ、そしてマイクの直近で歌うディランの生々しい息遣いまでが、力強いモノラル音圧によって余すところなく捉えられている。
トラックリスト
- A1 The Times They Are A-Changin'
- A2 Ballad Of Hollis Brown
- A3 With God On Our Side
- A4 One Too Many Mornings
- A5 North Country Blues
- B1 Only A Pawn In Their Game
- B2 Boots Of Spanish Leather
- B3 When The Ship Comes In
- B4 The Lonesome Death Of Hattie Carroll
- B5 Restless Farewell
動画プレイリスト
このアーティストについて
Bob Dylanは、1941年5月24日にアメリカ・ミネソタ州ダルースで生まれたシンガー、ソングライターだ。プロフィールでは「song and dance man」とも紹介...
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