Bob Dylan - The Freewheelin' Bob Dylan (1963)
Bob Dylan『The Freewheelin’ Bob Dylan』(1963)
ボブ・ディランの2作目となるこのアルバムは、1963年5月27日に米国コロンビアから発売された。前作では既存曲のカバーも多かったが、本作では自作曲が大きく前面に出ていて、ディランが“シンガー・ソングライター”として存在感をはっきり示した作品として知られている。フォーク・シーンの中にいながら、単なる伝統曲の継承にとどまらず、時事性、個人的な感情、ユーモア、風刺を同じ一枚の中に並べたところが重要だ。
収録曲の中心には、「Blowin’ in the Wind」「A Hard Rain’s A-Gonna Fall」「Don’t Think Twice, It’s All Right」といった、後年まで繰り返し参照される曲が並ぶ。特に「Blowin’ in the Wind」は、発売時点でピーター・ポール&マリー版のヒットもあり、曲そのものの知名度が先に広がっていた。とはいえ、ディラン本人の歌唱とギターで聴くと、同じ曲でも受け取られ方がかなり変わる。歌詞の一行ごとに問いを置いていくような運びが、そのままこの時代の空気を切り取っている。
作品の位置づけ
『The Freewheelin’ Bob Dylan』は、ディランの初期キャリアの中でも特に転機がはっきりした作品だといえる。デビュー作から一歩進み、作者としての手つきが前に出てくる。政治的な主題だけでなく、恋愛や会話の温度を持つ曲もあり、同じフォークの枠にいても、ウディ・ガスリー的な流れだけでは説明しきれない広がりがある。1960年代前半のアメリカン・フォークの文脈に置くと、ピート・シーガーらの伝統継承型の歌と、より個人の言葉を押し出す新しい書き手の方向が、ここでかなり鮮明になる。
録音は1962年4月から1963年4月にかけて進められ、曲順や収録曲の選定もかなり入れ替わったようだ。最初に候補にあった曲の一部は外され、別の新曲が差し込まれている。結果として、抗議歌、私的な別れの歌、風刺、語り口の強い曲がバランスよく並ぶ構成になった。アルバム全体を通して聴くと、一本調子ではなく、言葉の角度が曲ごとに変わっていくのがわかる。
聴きどころ
音の面では、かなり素朴な編成で進む。派手なアレンジはほぼなく、声、アコースティック・ギター、ハーモニカが中心だ。ただ、その簡潔さがむしろ強い。ディランの声は整っているというより、語りかけるように前へ出てくるタイプで、旋律よりも言葉の切れ目が印象に残る。実際に聴くと、メロディの変化以上に、フレーズの置き方や息継ぎの間合いが曲の輪郭を決めていることがわかる。
「A Hard Rain’s A-Gonna Fall」は、終末感を持つイメージの連なりが目立つ曲で、当時の政治的不安を直接説明せずに伝える。対して「Don’t Think Twice, It’s All Right」は、別れの場面を淡々と処理していて、感情を過剰に押し出さない。こうした温度差が一枚の中で共存しているのが、このアルバムの特徴だろう。抗議歌だけでもないし、私小説的な作品だけでもない。
ジャケットと当時の空気
象徴的なジャケット写真も、この作品を語るうえで外せない。グリニッジ・ヴィレッジの路上で、ディランと当時の恋人スーズ・ロトロが並んで歩く姿を写したもので、1963年のニューヨークの若いフォーク・シーンの空気がそのまま封じ込められている。音楽だけでなく、服装や歩き方まで含めて時代の記録になっているあたりが面白い。
また、本作には差し替え前の収録候補曲が存在していたことでも知られる。外された曲の話は、完成盤の印象を少し変えてくれる。最終的に残った曲だけでも十分に内容は強いが、制作段階での揺れがあったからこそ、完成形の密度がより際立って見える。
このUS初回ステレオ盤について
ここで挙げたのは、1963年の米国オリジナル・ステレオ盤、Columbia CS 8786。赤い“Two-Eye”のNonbreakableラベルで、“360 Sound”と“Stereo”表記があり、矢印は入っていない仕様だ。モノラル版の品番もジャケットの前後に記載されている。初期盤らしく、ディスク面やランアウトは当時のコロンビアらしい仕上がりで、後年の再発とは見た目の印象がかなり違う。
再発盤と比べると、この時期のオリジナル盤は、ラベルやジャケット表記に時代感がはっきり出る。音そのものについても、初回盤は当時のカッティングやプレスの特徴がそのまま残るため、作品の初期像を知るうえでは重要な存在になる。コレクション面でも、1963年のUS初版は『The Freewheelin’ Bob Dylan』という作品の歴史をそのまま背負った一枚として扱われている。
総評
『The Freewheelin’ Bob Dylan』は、ディランが時代の代弁者のように見られるようになる前夜の記録でもあり、同時にその始まりを告げる作品でもある。抗議の言葉、私的な別れ、風刺、寓意が同じ地平に置かれ、フォーク・アルバムの枠を少し広げた内容になっている。1960年代のアメリカ音楽を語るときに何度も参照されるのは、その歌詞の強さだけでなく、ひとつの歌い手が自分の言葉で世界を切り取る方法を、ここでかなり明確に示したからだろう。
トラックリスト
- A1 Blowin' In The Wind
- A2 Girl From The North Country
- A3 Masters Of War
- A4 Down The Highway
- A5 Bob Dylan's Blues
- A6 A Hard Rain's A-Gonna Fall
- B1 Don't Think Twice, It's All Right
- B2 Bob Dylan's Dream
- B3 Oxford Town
- B4 Talking World War III Blues
- B5 Corrina, Corrina
- B6 Honey, Just Allow Me One More Chance
- B7 I Shall Be Free
動画
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Bob Dylan - Corrina, Corrina (Official Audio)
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Bob Dylan - Blowin' in the Wind (Official Audio)
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Bob Dylan - Don't Think Twice, It's All Right (Official Audio)
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Girl from the North Country
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Bob Dylan - Masters of War (Official Audio)
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Bob Dylan - Down the Highway (Official Audio)
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Bob Dylan - Bob Dylan's Blues (Official Audio)
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Bob Dylan - A Hard Rain's A-Gonna Fall (Official Audio)
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Bob Dylan - Bob Dylan's Dream (Official Audio)
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Bob Dylan - Oxford Town (Official Audio)
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Bob Dylan - Talkin' World War III Blues (Official Audio)
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Bob Dylan - Honey, Just Allow Me One More Chance (Official Audio)
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Bob Dylan - I Shall Be Free (Official Audio)