Fumio Miyashita - Asuka (1985)
Fumio Miyashita 1985

Fumio Miyashita - Asuka (1985)

Electronic Ambient Experimental Modern Classical

Fumio Miyashita『Asuka』について

『Asuka』は、宮下富実夫が1985年に角川レコードから発表したアルバム。ファー・イースト・ファミリー・バンドやFar Outで知られる宮下が、ソロの電子音楽、そして奉納や瞑想に向けた制作へ重心を移していた時期の作品である。レーベル番号はL28P-1225。

制作背景・エピソード

この作品は、角川春樹の依頼を受けて制作された奉納曲アルバムとされている。背景には、宮下が1981年以降、天河大弁財天社への奉納演奏を毎年続けていたことがあり、その活動に角川が感銘を受けたという流れが語られている。角川が自身の建立した軽井沢の「飛鳥香宮(明日香宮)」のための音楽を求めたことが、制作のきっかけとして挙げられている。

収録音には、Casio CZ-5000、CZ-1000、CZ-101、Juno-60、SH-2、Prophet-600PRO、JX-3P、PG-200、PC-8801mk II、MPU-401、Six-Trak Pro、EX-800、System-100M、MC-4、Drum Trak Pro、Chroma Polarisといった機材が記されている。ジャケット画は山岸凉子とされる。

時代の文脈

1985年の時点で、宮下はすでにフュージョンやロックの文脈から離れ、ソロのシンセサイザー作品へ比重を移していた。本作は、その流れの中で、角川春樹の依頼によって「奉納」という目的を前面に出した一枚として位置づけられる。雅楽的な旋律や東洋哲学的モチーフをシンセサイザーで展開する作品として紹介されており、商業ポップの延長ではない制作意図がはっきりしている。

同時代の日本の電子音楽の中でも、こうした宗教性や儀式性を前面に出したアルバムはかなり特徴的だ。宮下自身も、1980年代前半にはヒーリング寄りの制作へ進んでおり、『Asuka』はその流れの中にある。ニューエイジやアンビエント、バレアリックの文脈で後年あらためて取り上げられる以前から、宮下が個人の活動として積み重ねてきた奉納演奏の延長線上に置ける作品である。

後世への影響

のちには、レアな日本産アンビエント/バレアリックの文脈で発掘され、再発・再流通の対象になっている。紹介文では「Japanese Balearic Classic」や「日本のAmbientの重要なルーツ」といった言い方が見られ、宮下の作品群がヒーリングや瞑想音楽の先駆として見直されていることがわかる。

一方で、評価は一様ではない。通販や紹介文では、ミニマルなシンセの反復がアンビエントかつサイケデリックな「トリップ感」を生む、荘厳で霊性の高いサウンドとして扱われることがある。反対に、Nick Kent系の日本電子音楽ガイドでは「All unsophisticated synthesizers. Not very impressive.」と記されており、素朴で洗練不足と受け取る見方もある。音色の作り込みよりも、儀式性や瞑想性に価値を置くかどうかで印象が分かれるアルバムだ。

当時の主要チャート実績や売上については、今回確認できた範囲では数字は見当たらない。だが、角川春樹の依頼、天河大弁財天社での奉納演奏、そして軽井沢の「飛鳥香宮(明日香宮)」という具体的な背景を持つ点で、『Asuka』は宮下富実夫のキャリアの中でもかなり特殊な位置にある。

トラックリスト

  1. A1 神都宮
  2. A2 天女宮
  3. A3 縄文の郷
  4. A4 妙音天
  5. B1 神楽殿
  6. B2 平安の舞
  7. B3 天架橋
  8. B4 心界の響

動画プレイリスト

公開: 2026年10月
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