Yanni - Keys To Imagination (1986)
Yanni『Keys To Imagination』について
1986年の『Keys To Imagination』は、ギリシャ出身のキーボード奏者YanniがPrivate Musicから発表した初期の代表作。Electronicを軸にしながら、Modern ClassicalやAmbientの要素を強く持つ作品で、のちのYanniのイメージを形づくる土台がこの時点ですでに見えている。旋律を前に出しつつ、シンセサイザーの層で空間を広げていく作りがはっきりしていて、ニューエイジの文脈に置かれながらも、より劇的で映像的な方向へ寄っているのが特徴。
YanniことYiannis Chryssomallisは、ギリシャ・カラマタ生まれ。ミネソタ大学で心理学を学んだのち、独学のピアニスト、キーボーディスト、プロデューサーとして活動を広げた人物で、楽譜を読めないまま自分なりの記譜法で作曲を進めたという経歴でも知られる。そうした背景もあってか、このアルバムは理論先行というより、音の流れとメロディの運びで引っぱるタイプの作品になっている。
Private Music期の空気
リリース元のPrivate Musicは、Tangerine DreamのPeter Baumannが1984年に立ち上げたレーベルで、当時の大手が拾いにくかったインストゥルメンタル作品を積極的に扱っていた。Yanniはその看板アーティストのひとりで、この『Keys To Imagination』もレーベルの方向性とよく噛み合っている。制作面ではYanni自身が作曲だけでなく、演奏、エンジニア、ミキシング、プロデュースまで担っており、作品全体の統一感が強い。
日本盤は帯付きで、写真入りのライナーノーツとPrivate Musicのディスコグラフィー・インサートが付属する仕様。1980年代の国内盤らしく、アルバム単体だけでなくレーベルの流れも追える作りになっている。
収録曲の印象
収録曲の中では「Santorini」「The North Shore of Matsushima」「Nostalgia」といった曲が目を引く。とくに「Santorini」は後年までYanniの代表曲として長く演奏されてきた楽曲で、この時期の作品がそのまま定番になっていく流れが見える。「The North Shore of Matsushima」も地名をそのまま題名にした曲で、音で風景を描く姿勢がはっきりしている。曲名の付け方からして、すでに映像のような連想を誘う作り。
実際に聴くと、派手なビートで押す場面よりも、音の重ね方とコードの変化で場面転換を作る部分が印象に残る。ピアノやシンセのフレーズは短く区切られ、そこに持続音や広がりのあるパッドが重なる。メロディは分かりやすく、同時に展開は細かく、単純なヒーリング音楽の枠には収まりきらない。曲ごとの輪郭がくっきりしていて、アルバム全体も流れで聴かせる構成。
同時代の中での位置
1980年代半ばのインストゥルメンタル/ニューエイジ周辺には、George Winstonのようなピアノ中心の作品や、Kitaroのように東洋的なスケール感を前面に出す作品もあった。その中で『Keys To Imagination』は、よりシンセサイザー主体で、しかもドラマ性を強めた作り。Tangerine Dreamの流れを引くシンセ音楽や、映画音楽的な広がりを持つ作品とも近い感触がある。
AllMusicではこのアルバムを「劇的なシンセサイザー音楽の傑作」と高く評価している。大げさな装飾よりも、旋律を軸に空間を組み立てていく点が、この評価につながっているように見える。Yanniにとっても、のちの大きな会場向けの演奏や、よりオーケストラ的なアプローチへ進む前段階として重要な一枚。
まとめ
『Keys To Imagination』は、Yanniの初期像がまとまっているアルバム。独学の作曲家としての感覚、Private Musicというレーベルの方向性、1980年代ニューエイジ/インストゥルメンタルの空気が、そのまま一枚に収まっている。メロディの分かりやすさと、シンセサイザーによる大きな空間づくり。その両方が早い段階で噛み合っているのが、この作品の核になっている。
トラックリスト
- A1 North Shore 5:06
- A2 Looking Glass 6:39
- A3 Nostalgia 4:29
- A4 Santorini 4:35
- B1 Port Of Mystery 4:49
- B2 Keys To Imagination 5:15
- B3 Forgotten Yesterdays 3:29
- B4 Forbidden Dreams 3:57