Synergy - Electronic Realizations For Rock Orchestra (1975)
Synergy『Electronic Realizations For Rock Orchestra』
Synergy名義で始まったラリー・ファストの最初のアルバムが、『Electronic Realizations For Rock Orchestra』。オリジナルは1975年作で、日本盤は1976年にPhilipsのRJ-7072として出ている。電子音だけで組み立てた作品として、ファストの初期活動を代表する1枚だ。
制作背景・エピソード
このアルバムの出発点は、ラリー・ファスト本人が大学の20世紀作曲の授業で書き始めた素材にあるという。とくに「Legacy」には、その課題作の一部が含まれているとされている。全曲は事前に4トラックで“設計図”のように作り込まれていたそうで、録音は1975年1月から2月にかけて、ニュージャージー州ウェストオレンジのHouse of Musicで行われた。
ファストは後年、録音の最中に予期せぬことが起こり、その場で考えながら進めたと振り返っている。Synergyという名義はバックミンスター・フラーの著作から取ったもので、複数の音の要素が相互作用して生まれる効果を、マルチトラック録音の感覚に重ねたものだという。
時代の文脈
1970年代半ば、シンセサイザーはまだロックの中心というより周辺にある楽器だった。その時期に、電子音だけで“ロック・オーケストラ”を構想したのがこの作品で、ラリー・ファスト自身も大学時代から電子音楽の実践を続けつつ、ロックやクラシックへの関心を持っていた。
英米の音楽誌では、本作はプログレッシブ・ロック周辺の実験の延長にあるものとして扱われている。ファストにとっても、Synergy名義の出発点であり、その後のPeter GabrielやNektar周辺との活動につながる前段階に置かれる作品だ。後年の公式FAQでは、発売直後にPassport社へ大量の反響が届いたことも記されている。『Billboard』も1975年にこのアルバムを紹介している。
後世への反響
今回確認できる範囲では、明確なカバーやサンプリング、影響関係を一次資料で裏づける記録は見当たらない。ただ、後年の回顧ではシンセサイザー評論家や音楽ファンから「先駆的」「ランドマーク」と評されており、シーケンスと音色変化の進行、緻密に組み立てられた構成が注目点として挙げられている。
日本盤は1976年リリースで、オリジナルの1975年盤から少し遅れての登場になる。タイトル曲のような単独ヒットを追うタイプの作品ではなく、アルバム全体の設計で聴かれてきた1枚として記憶されている。
トラックリスト
- A1 Legacy 10:05
- A2 Slaughter On Tenth Avenue 11:46
- B1 Synergy 5:26
- B2 Relay Breakdown 6:18
- B3 Warriors 12:54