当山ひとみ - Just Call Me Penny (1981)
Hitomi "Penny" Tohyama 1981

当山ひとみ - Just Call Me Penny (1981)

Rock Pop Kayōkyoku City Pop AOR

当山ひとみ『Just Call Me Penny』――沖縄出身シンガーの個性が最初にまとまった1981年作

当山ひとみの『Just Call Me Penny』は、1981年に日本コロムビアから登場したデビュー作で、彼女の愛称でもある「Penny」をそのまま前面に出したアルバムだ。沖縄生まれの感覚、英語圏のポップスやソウルの空気、日本の歌謡曲的なメロディ感が、最初の一枚の時点でかなりはっきり見えている作品として知られている。AOR、シティポップ、歌謡曲、ファンク寄りの要素が同居していて、1980年代初頭の国産ポップスの広がりをそのまま映したような内容になっている。

当山ひとみは1957年生まれ、沖縄出身のシンガーで、デビュー当時は「歌手になりたかったわけではなかった」と後年語っている。日本語も十分ではなかったという話も残っていて、そうした背景を踏まえると、このデビュー作で聴ける発音やフレージングの独特さも、単なる“個性”ではなく彼女の来歴と結びついたものとして受け取れる。沖縄のアメリカンカルチャーに近い環境で育ったことが、アルバム全体の輪郭にそのまま表れている感じがある。

制作の中心にある都会的なバンドサウンド

内容面では、当時の制作陣がしっかりと土台を作っている。井田リエ&42ndストリート周辺の流れを感じさせるソウル/ファンク寄りの編成で、リズムの置き方がはっきりしている曲が多い。そこに当山ひとみの声が乗ることで、ただの洋楽志向では終わらない日本語ポップスとして成立しているのが面白いところだ。

収録曲では、“RAINY DRIVER”のようなメロウな曲、“BABY, BABY, BABY”のような甘さのあるナンバー、“SFO-OAKLAND”のような軽快なファンク感を持つ曲が並び、アルバム内で表情が切り替わる。サウンド面では、当時のAORやフュージョンの空気を取り込みつつ、歌謡曲のわかりやすいフックも残している。英語の響きと日本語の歌詞が自然に混ざる場面もあって、80年代初頭の国産ポップスの中でもかなり立ち位置がはっきりした一枚だ。

「Instant Polaroid」と「Rainy Driver」にまつわるエピソード

この作品には、制作の裏側をうかがわせる話もある。録音済みでなかった「Instant Polaroid」と「Rainy Driver」は、24丁目バンドに任せたというエピソードが残っている。こうした経緯を知ると、アルバムの中でこれらの曲が持つ、少し洗練された都会的な手触りにも納得がいく。バンドの演奏が前に出すぎず、歌を中心に据えながらも、グルーヴの質感で引っ張っていく作り。

また、当山ひとみはのちに「Penny」という名義でも語られることが多く、このデビュー作はその呼び名を決定づけた作品でもある。アーティスト像の立ち上がり方が、作品タイトルとそのまま重なっているのが印象的だ。

1981年の国産シーンでの位置づけ

1981年という時期は、日本のポップスがソウル、ディスコ、AOR、フュージョンの要素を積極的に取り込んでいた時期にあたる。『Just Call Me Penny』もその流れの中にありながら、単に流行をなぞるのではなく、沖縄出身という背景と英語圏の空気感を含んだ歌声で、独自の輪郭を作っている。山下達郎、大貫妙子、竹内まりや、杏里といった同時代のシティポップ文脈と並べて語られることもあるが、この作品はその中でも、よりソウル/ファンク寄りの肌触りが強い。

ヒット曲として広く知られる定番が前面に立つタイプのアルバムというより、全体の流れで聴かせるタイプの一枚だ。だからこそ、曲ごとの細かな表情よりも、アルバム単位での統一感が印象に残る。タイトル曲や“RAINY DRIVER”のような曲名も含めて、80年代初頭の空気がよく出ている。

見本盤としての盤の表情

今回の盤は1981年リリースのオリジナル期のものにあたり、レーベルは日本コロムビア。見本品として流通した個体で、通常盤とはコレクター的な意味合いが少し変わる。音源そのものは同じ時代の初出音源として扱えるが、見本盤ならではの存在感があるのも事実だ。日本のシティポップ/AORが再評価される中で、この作品が改めて注目されるのも自然な流れに見える。

当山ひとみの出発点としてだけでなく、1980年代の国産ポップスが持っていた外向きの感覚、都会的な編曲、そして歌い手の背景がそのまま作品に反映された例として、『Just Call Me Penny』はかなり重要な位置にある一枚だ。

トラックリスト

  1. A1 So Many Times
  2. A2 My Guy (Café Sign)
  3. A3 Image Change
  4. A4 Rainy Driver
  5. B1 Station
  6. B2 Baby, Baby, Baby
  7. B3 Midnight Express
  8. B4 SFO-Oakland
  9. B5 Instant Polaroid

動画プレイリスト

Share
記事一覧に戻る

あわせて聴きたい "Kayōkyoku"

toast