当山ひとみ - Sexy Robot = セクシィ・ロボット? (1983)
Hitomi "Penny" Tohyama 1983

当山ひとみ - Sexy Robot = セクシィ・ロボット? (1983)

Electronic Rock Pop Funk / Soul Boogie Funk Synth-pop Kayōkyoku City Pop AOR

当山ひとみ『Sexy Robot』(1983) ― シンセとブギー感覚で切り取った80年代前半の都会派ポップ

当山ひとみは、沖縄・コザ市出身の女性シンガーで、1980年代の日本のポップス/ソウル文脈の中で独自の位置を持つ存在だ。本作『Sexy Robot』は1983年10月に日本コロムビアから発表された5作目のオリジナル・アルバムで、彼女のディスコグラフィーの中でも、シンセサイザーとリズムマシンを積極的に取り込んだ時期の作品として整理できる。タイトルから受ける印象どおり、機械的な響きと身体性のあるグルーヴが並走する内容で、当時のAOR、ブギー、シティポップ、ファンクを横断する空気が濃い。

1983年という時代の手触り

この時期の日本のポップスは、アレンジ面で新しい電子機材の導入が進み、打ち込みやドラムマシンの質感が作品の輪郭を決めることも多かった。『Sexy Robot』でも、A1からA5、そしてB5でDrumulatorが使われている。E-MU製のこのドラムマシンは、当時としては新しい存在で、手数の多い生ドラムとは違う、はっきりした打点と均整の取れたリズムを曲に与えている。音の隙間がきちんと見えるため、ベースラインやシンセの動きが前に出やすく、結果としてファンク寄りの推進力が際立つ構成になっている。

制作にはプロデューサーの兼松光が関わり、当山ひとみを見出した人物としても知られる。英語圏のソウルやR&Bの感覚を日本語ポップスへ落とし込む方向性は、本作でも明確だ。歌の運びは軽やかだが、リズムの置き方やコーラスの重ね方には黒っぽいニュアンスが残る。シティポップの文脈で語られることが多い作品ではあるものの、単に洗練された都会派というより、ダンス・ミュージック寄りの芯が見えるアルバムだ。

収録曲と参加ミュージシャン

クレジットを見ると、ゲスト陣もかなり興味深い。松下誠、Mike Dunn、難波弘之らが参加しており、さらにJake H. Concepcion、Hiroyuki Nanba、Makoto Matsushita、Atsuo Okamotoについては、それぞれRVC RecordsやMoon Records所属として参加している旨が記されている。こうした越境的な布陣は、80年代前半の日本のスタジオ録音らしい特徴でもある。レーベルや所属の枠をまたいで、機能的に最適なプレイヤーを集める制作体制が見える。

特別な謝辞として、Kazuo Sudo(Hot Wave)へのミュージシャン調整の感謝、Yasuo & Mie Takasu(Arcadia Studio)への感謝、さらに「Nancy & Myrah(ペニーの姉妹)」への献辞も記されている。アルバム全体が、制作チームと周囲の支えを含めて成立していることがわかるクレジットだ。こうした記述は、作品の音そのものだけでなく、当時の現場の距離感まで伝える。

表題曲「Sexy Robot」の輪郭

タイトル曲「Sexy Robot」は、このアルバムの印象を端的に示す楽曲として扱われることが多い。ブラック・コンテンポラリーやニューヨーク的なサウンドを日本のポップスに接続した曲として紹介されることがあり、70年代ソウルの余韻を残しながら、80年代らしい機械的なビートとシンセの質感を前面に出している。メロディは耳に残りやすいが、単純に歌を聴かせる作りではなく、演奏のグルーヴが曲の推進力を担っている点が大きい。

実際に聴くと、歌声の艶やかさとリズムトラックの硬さがぶつかるのではなく、むしろ互いを引き立てているのが印象に残る。ドラムマシンの直線的な刻みの上で、ベースとギターが細かく動き、シンセが空間を埋める。その上に当山ひとみのボーカルが乗ることで、冷たすぎず、かといって泥臭くもない、独特の温度が生まれている。

当山ひとみの位置づけ

当山ひとみは、沖縄で育ち、のちに渡米してオークランドの高校に通い、モータウンやフィリー・ソウルに親しんだ経歴を持つ。その背景が、彼女の歌にある英語圏ソウルの感覚と、日本語ポップスの整ったフレーズ感の両立につながっている。1981年のデビュー以降、80年代前半の日本のシーンで、洋楽的なR&B感覚を持ち込む存在として見られてきたが、『Sexy Robot』ではその方向性がより明確になっている。

同時代の作品と比べると、山下達郎や竹内まりやに代表されるシティポップの流れとも接点がありつつ、よりファンク寄り、R&B寄りの質感が強い。シンセ・ファンクやブギーの要素を、日本語の歌ものに自然に組み込んでいる点に、この作品の特徴がある。後年、当時の日本の都会派ポップが再評価される中で、このアルバムもその流れの中に置かれることが多くなった。

まとめ

『Sexy Robot』は、1983年という時代の空気を、シンセ、ドラムマシン、ソウル由来の歌唱で切り取ったアルバムだ。タイトル曲を軸に、当山ひとみのボーカルが機械的なトラックに人間味を与え、同時に都会的な輪郭も保っている。派手な装飾より、リズムと音色の組み合わせで印象を作る作品であり、80年代前半の日本のポップスがどこまで黒く、どこまで洗練されうるかを示す一枚として記憶されている。

トラックリスト

  1. A1 Sexy Robot = セクシィ・ロボット
  2. A2 Wanna Kiss = Kissしたい
  3. A3 Tuxedo Connection = タキシード・コネクション
  4. A4 Let's Talk In Bed
  5. A5 We Are In The Dark = 素肌ゲーム
  6. B1 Behind You
  7. B2 Try To Say = 言い出しかねて
  8. B3 Cathy = キャシィ
  9. B4 Slow Love = 愛はゆっくりやってくる
  10. B5 Be Mine

動画プレイリスト

公開: 2026年8月
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