Marcos Valle - Samba '68 (1968)
Marcos Valle 1968

Marcos Valle - Samba '68 (1968)

Jazz Latin Bossa Nova Latin Jazz

Marcos Valle『Samba ’68』について

ブラジル出身のシンガー、ソングライター、プロデューサーであるマルコス・ヴァーリが、1968年にヴァーヴから発表したアルバムが『Samba ’68』だ。英語詞を中心に据えた内容で、ブラジル音楽の要素をアメリカ市場向けの録音と編曲に接続した作品として知られている。リリースはドイツ盤で、レーベルはVerve Records、カタログ番号は710 017。録音は1967年10月から11月にかけてニューヨークで行われ、1968年の時点でこのタイトルが世に出たことになる。

マルコス・ヴァーリは1943年生まれ、リオデジャネイロ出身。すでに「Samba de Verão(So Nice)」の作者としてブラジルでは知られており、このアルバムではそうした作家性を英語詞の形で再提示している。制作面では、編曲をエウミール・デオダートが担当し、プロデュースはボブ・モーガンとレイ・ギルバート。ヴァーリ本人の歌とギターに加えて、妻アナマリア・ヴァーリのコーラスが大きな役割を果たしている点も、この盤の輪郭をはっきりさせている。

アメリカ向けに組み立てられたサンバ作品

この時期のブラジル音楽は、ボサノヴァの国際的な広がりを背景に、より広いポップ市場へ向かう動きが進んでいた。『Samba ’68』もその流れの中にある。曲の多くはヴァーリの自作曲で、英語詞によってアメリカのリスナーに届く形へ整えられている。サンバのリズム感を土台にしながら、ニューヨーク録音らしいオーケストレーションが加わり、ラテン・ジャズの文脈にも置ける仕上がりになっている。

同時代の比較対象としては、アストラッド・ジルベルトやスタン・ゲッツ周辺の作品を思い浮かべやすい。いずれもブラジル音楽を英語圏に橋渡しした存在だが、ヴァーリの場合は作曲家本人が前面に出ている点が重要だ。単なる解釈盤ではなく、自作を自分の声でアメリカ市場に提示したアルバムという位置づけになる。

収録曲と作品の印象

収録は11曲で、代表曲の再提示という性格が強い。特に「So Nice」として知られる「Samba de Verão」は、このアルバムを語るうえで外せない一曲だ。タイトルの通り夏の感触を持つこの曲は、もともとメロディの流れが明快で、英語詞でもその輪郭が崩れにくい。こうした既存の強い楽曲を軸にしながら、アルバム全体が統一感を保っている。

実際に聴くと、前へ出すぎないリズムの置き方と、歌のフレーズの運びが印象に残る。派手な演奏で押すタイプではなく、声、コーラス、編曲がそれぞれの役割を保ったまま並ぶ感じだ。ブラジル側の感覚とアメリカのスタジオ制作が、無理なく同居しているところにこの作品の特徴がある。耳当たりのよさだけでなく、音の配置がきちんと考えられている盤として受け取れる。

当時の評価とその後

発表当時の評価は好意的だった。『Billboard』は1968年3月23日号で、この作品を「現代的なサンバの優れたアルバム」と評している。ヒットチャートの大きな実績よりも、批評面での評価が先に立つタイプの作品と見てよさそうだ。後年になると、ボサノヴァやサンバをアメリカ向けに洗練したクロスオーバー作として再評価されてきた。

マルコス・ヴァーリのキャリアの中では、初期の代表曲を英語圏へ持ち込んだ重要な一枚として位置づけられる。のちのブラジル音楽再評価の流れを考えると、このアルバムは単なる輸出盤ではなく、ブラジルのソングライティングが国境を越えて機能することを示した記録でもある。ヴァーリのメロディ感覚、デオダートの編曲、ニューヨーク録音の空気、その三つがきれいに重なった作品だ。

まとめ

『Samba ’68』は、1968年という時代に、マルコス・ヴァーリが自作曲を英語詞で再構成し、ブラジル音楽を国際的なポップ/ジャズの場へ押し出したアルバムだ。ヴァーリの作曲家としての強さと、スタジオ作品としての整った作りが両立している。ボサノヴァの延長線上にありながら、より広いラテン・ジャズの文脈でも読める一枚として、今見ても輪郭のはっきりした作品である。

トラックリスト

  1. A1 The Answer 2:39
  2. A2 Crickets Sing For Anamaria 2:08
  3. A3 So Nice (Summer Samba) 2:26
  4. A4 Chup Chup, I Got Away 2:14
  5. A5 If You Went Away 2:51
  6. A6 Pepino Beach 1:50
  7. B1 She Told Me, She Told Me 2:41
  8. B2 It's Time To Sing 2:50
  9. B3 Batucada 1:58
  10. B4 The Face I Love 1:56
  11. B5 Safely In Your Arms 3:06

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