Dom Um Romao - Spirit Of The Times (Espirito Du Tempo) (1975)
Dom Um Romao 1975

Dom Um Romao - Spirit Of The Times (Espirito Du Tempo) (1975)

Jazz Latin Jazz-Funk Latin Jazz Bossanova Batucada

Dom Um Romão『Spirit Of The Times(Espirito Du Tempo)』について

Dom Um Romãoの『Spirit Of The Times(Espirito Du Tempo)』は、1973年に録音され、1975年にMuse Recordsから発表された作品だ。ブラジル出身のドラマー/パーカッショニスト/コンポーザーであるDom Um Romãoが、自身の持っていた複数の現場感覚をひとつにまとめたアルバムとして位置づけられている。ボサノヴァ、ブラジルの打楽器感覚、アメリカのジャズ、そして70年代ジャズ・ファンクの流れが、ここではかなり自然に同居している。

Dom Um Romãoは、Cannonball AdderleyやAntonio Carlos Jobim、Sergio Mendes、Frank Sinatraらと共演し、さらに1971年から1974年にはWeather Reportのメンバーとしても活動した人物だ。その経歴を踏まえると、本作は単なる“ブラジリアン・ジャズ盤”ではなく、ニューヨークのジャズ界とブラジル音楽の接点を体現した1枚として見えてくる。Muse Recordsという、当時のストレートなジャズからフュージョン寄りの作品まで抱えていたレーベルから出ている点も、このアルバムの性格とよく合っている。

録音と発表のタイムラグ

収録は1973年6月6日と11月21日に行われ、発表は1975年。録音から少し間を置いて世に出た作品だ。1970年代前半のジャズ界では、ブラジル音楽の要素を取り込んだ作品や、パーカッションを前景に出したフュージョン作品が増えていたが、本作もその流れの中に置ける。Dom Um Romão自身の演奏歴を考えると、Weather Reportでの経験を経たあとに、より自分のリズム言語を前に出した作りになっている。

参加メンバーにはDom Salvador、Joe Beck、Sivuca、Amaury Tristão、Frank Tusaの名が並ぶ。ブラジル系の語法と米国ジャズの演奏家が混ざる編成で、こうした顔ぶれからも作品の輪郭が見えてくる。Dom SalvadorのピアノやJoe Beckのギターを含む編成は、単なるリズム主導ではなく、和声の動きやフレーズの受け渡しまで含めて聴ける構造になっている。

作品の中身

全7曲の構成で、収録曲の中では「Shakin’ (Ginga Gingou)」「Wait on the Corner」「Highway」などがよく取り上げられる。とくに「Shakin’ (Ginga Gingou)」は、タイトルどおり身体の動きが先に立つような推進力があり、Dom Um Romãoのバトゥーカ的な感覚が前に出る。打楽器が単にリズムを刻むだけでなく、曲の輪郭そのものを作っている印象が強い。

「Wait on the Corner」や「Highway」では、ジャズ・ファンク寄りの流れが見えやすい。ベースとドラムのうねりに、ギターや鍵盤が細かく絡み、そこへブラジル由来のリズムが重なる。熱量は高いが、ただ音数を増やして押していくタイプではなく、拍の置き方や間の取り方に特徴がある。聴き進めるほど、Dom Um Romãoが“リズムの人”であると同時に、曲全体の流れを組み立てる人でもあることがわかる。

同時代の文脈

この時期のブラジル系ジャズには、Sergio Mendes周辺の洗練されたクロスオーバーや、Antonio Carlos Jobimのような作曲家主導のボサノヴァとは別に、より打楽器の存在感を前に出した流れがある。Dom Um Romãoはその中で、演奏者としての経験をそのまま作品に持ち込んだタイプだ。Weather Reportでの活動歴を踏まえると、70年代ジャズ・ロックやフュージョンの感触も無縁ではない。

AllMusicでは、彼のMuse時代の作品は、これまで関わってきた伝統をつなぎ合わせたリズムの祝祭として扱われている。実際、この『Spirit Of The Times』も、ブラジルの土着的な打楽器感覚と、都市的なジャズの語法が、同じテーブルに置かれている感じがある。ブラジリアン・ジャズ、ラテン・ジャズ、ジャズ・ファンクの境目をきっちり分けるより、その境目そのものを演奏でまたいでいく作品だ。

Muse Records盤としての位置

Muse Recordsは1972年にJoe Fieldsによって設立されたUSジャズ・レーベルで、当時の“コンテンポラリーな音”を打ち出していた。このレーベルからDom Um Romãoのリーダー作が出ていることは、彼の音楽が単なるブラジル音楽の輸入品ではなく、アメリカのジャズ市場の中で実際に機能していたことを示している。ブラジルのリズムを前面に出しながら、ジャズの編成や即興の文法にしっかり乗っている点が、この盤の骨格になっている。

Dom Um Romãoのディスコグラフィーの中でも、本作はブラジル音楽と米国ジャズの結節点を明確に示す1枚として見やすい。派手な売れ筋というより、演奏者としての蓄積をそのまま作品化した内容で、1970年代半ばのジャズの広がりをそのまま映した記録でもある。録音年代、参加メンバー、リズムの組み立て方、そのどれもがこの時代らしい輪郭を持っている。

トラックリスト

  1. A1 Shake (Ginga Gingou) 3:01
  2. A2 Wait On The Corner 6:18
  3. A3 Lamento Negro 4:00
  4. A4 Highway 4:27
  5. B1 The Angels 4:03
  6. B2 The Salvation Army 4:06
  7. B3 Kitchen (Cosinha) 2:47

動画プレイリスト

公開: 2026年9月
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