Stan Getz / João Gilberto Featuring Antonio Carlos Jobim - Getz / Gilberto (1964)
Stan Getz 1964

Stan Getz / João Gilberto Featuring Antonio Carlos Jobim - Getz / Gilberto (1964)

Jazz Stage & Screen Latin Bossa Nova Latin Jazz

Stan Getz / João Gilberto Featuring Antonio Carlos Jobim『Getz / Gilberto』(1964)

サックス奏者Stan Getz、歌とギターのJoão Gilberto、そして作曲家Antonio Carlos Jobim。1964年にVerve Recordsから出たこのアルバムは、ボサノヴァがアメリカのジャズ・シーンに深く入り込んだ瞬間をそのまま刻んだ作品として知られている。録音は1963年3月18日と19日、ニューヨークで行われた。US盤の初出で、Verveのジャズ・カタログの中でも特に広く流通した一枚。

作品の輪郭

このアルバムは、ジャズの即興性とブラジル音楽のリズム、そして抑えた歌の表現がきれいに重なった内容になっている。Stan Getzのテナー・サックスは前に出すぎず、音の輪郭を保ちながら流れを作る。João Gilbertoの歌とギターは、拍を強く押し出すのではなく、細かい揺れを保ったまま進む。Antonio Carlos Jobimは作曲家として、曲そのものの骨格を支えている。

聴きどころとしてまず挙がるのが「The Girl From Ipanema」。英語詞のヴォーカルを担当したAstrud Gilbertoの歌声が、この曲の広い知名度を決定づけた。彼女は当時プロ歌手ではなく、João Gilbertoの妻としてセッションに居合わせていた人物だったが、アメリカ向けに英語で歌える人材としてその場で起用されたと伝えられている。結果として、彼女の声はこのアルバムの最も有名な要素になった。

「The Girl From Ipanema」とその周辺

「The Girl From Ipanema」は、このレコードを語るうえで外せない代表曲。世界的に知られるボサノヴァの定番であり、英語詞とポルトガル語詞が交差する構成も印象に残る。Astrud Gilbertoにとっては初めてのレコーディングになったが、当初はセッション・ミュージシャンとしての規定料金のみで、クレジットや印税も十分には得られなかったとされる。大ヒットの裏で、本人に十分な見返りが残らなかった点も、この曲の歴史に含まれている。

収録曲全体を通してみると、派手なソロの応酬よりも、余白のある進行とテンポの保ち方が印象に残る。演奏は一見静かだが、拍の置き方や声の入れ方に細かな設計がある。ボサノヴァがジャズと接続する際の具体例として、このアルバムは非常に分かりやすい。ハードなスウィングに寄らず、声とリズムの距離感で引っ張る作り。

1964年のUS盤について

このUS盤はVerve RecordsのV6-8545。ラベル表記は「MGM RECORDS - A DIVISION OF METRO-GOLDWYN-MAYER, INC. - Made in U.S.A.」。初期のUSプレスでは、スパインに黄色文字が使われていたことも知られている。盤面の刻印は手書き系の要素が中心で、プレス工場識別のブロック状の「S」や、版番号の機械打ちが入る個体もある。

また、同じUSステレオ盤でもマトリクス違いで複数のミックスが存在する。フロントとバックのジャケット右上に「Stereo」が入る版で、同時期の別コピーとは見た目の細部が異なる。ラベル上ではB面の「(Jazz Samba)」表記位置にも違いがあり、同系統の初期盤の中でも細かな差がある。

位置づけ

Stan Getzにとっては、ボサノヴァを世界規模で広めた代表作のひとつ。Verveの1960年代を支えた録音のひとつでもある。レーベル側では、当時Creed TaylorのディレクションのもとでStan GetzやAstrud Gilbertoの作品がミリオンセラー級の成功を収めていた時期にあたる。ジャズの文脈では、同時代のブラジル音楽受容を語る際に外せないタイトル。

同ジャンルの中では、後のボサノヴァ・ブームや、ジャズ側からのラテン/ブラジル音楽への接近を考えるうえで基準点のように扱われる。曲作り、歌、サックス、ギターの役割分担が明確で、どの要素も前に出すぎない。そのバランスが、このアルバムの記憶され方を長く保っている。

1964年の時点で完成度の高い一枚として出たこの作品は、ボサノヴァが単なる流行ではなく、ジャズの語法に組み込まれていく過程を示した記録でもある。スタジオでの偶然性も含めて、作品の印象を形づくっているレコードだ。

トラックリスト

  1. A1 The Girl From Ipanema 5:15
  2. A2 Doralice 2:45
  3. A3 P'ra Machuchar Meu Coração 5:07
  4. A4 Desafinado 4:05
  5. B1 Corcovado 4:15
  6. B2 Só Danço Samba 3:30
  7. B3 O Grande Amor 5:25
  8. B4 Vivo Sonhando 2:52

動画プレイリスト

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