Bobbi Humphrey - Fancy Dancer (1975)
Bobbi Humphrey 1975

Bobbi Humphrey - Fancy Dancer (1975)

Jazz Funk / Soul Jazz-Funk Latin Jazz

Bobbi Humphrey『Fancy Dancer』(1975) について

Bobbi Humphreyの『Fancy Dancer』は、1975年にBlue Noteから発表された作品である。Bobbi Humphreyはアメリカ出身のジャズ・フルート奏者、作曲家で、1971年にはBlue Noteに初めて契約した女性インストゥルメンタリストの一人として知られる。本作もその流れの中にある一枚で、ジャズの語法を軸にしながら、当時のソウルやファンクの感触を取り込んだ70年代Blue Noteらしい内容になっている。

1970年代半ばのBlue Noteは、60年代のハード・バップ中心のイメージから少し離れ、より都市的でリズムの前に出た作品も多く並ぶ時期だった。『Fancy Dancer』もその文脈の中で捉えやすい。フルートを主役に据えたジャズ・ファンクという点で、同時代のジャズ・フルート作品の中でも存在感がある。Bobbi Humphreyのディスコグラフィーの中では、初期の主要作の一つとして位置づけられるアルバムである。

作品の輪郭

本作の魅力は、フルートという楽器の軽やかさを前面に出しながら、演奏全体はかなり実務的に組み立てられているところにある。旋律は細かく動き、リズムは前へ進み、アンサンブルは過度に装飾しない。Bobbi Humphreyの演奏は、音数で押すというより、フレーズの置き方と間の取り方で曲の流れを作っていくタイプで、そこに70年代のジャズ・ファンク特有の推進力が乗る。

また、Latin Jazzの要素が入っている点も見逃せない。単にラテン風の色づけにとどまらず、拍の感じ方や打楽器的なノリにまで関わってくるため、曲の表情が一方向に固定されにくい。ブルーノートの同時代作品の中でも、硬派なジャズの延長というより、ダンス感覚と演奏の両立に重心がある一枚として聴こえる。

Bobbi Humphreyという存在

Bobbi Humphreyは1945年生まれのフルート奏者で、テキサス州マーロンの出身。女性のジャズ・インストゥルメンタリストとして早い段階から大手レーベルに迎えられた存在であり、Blue Noteでの活動はそのまま彼女の代表的なキャリアの核になっている。ソロ活動だけでなく、George DukeやDonald Byrd、Thad Jones/Mel Lewis系の周辺とも関わりがあり、70年代ジャズの広がりの中で位置を占めている。

彼女の音色は、いわゆる“透明感”だけで語れるものではない。息の流れがはっきりしていて、旋律をなぞるだけでなく、リズムの芯に触れるような吹き方をする。この点が、同じフルート系のジャズでも、よりメロディ志向の作品や、より実験寄りの作品とは違う印象を残す。『Fancy Dancer』では、その演奏の性格が比較的わかりやすく出ている。

注目曲の聴きどころ

アルバムのタイトル曲「Fancy Dancer」は、本作を代表する一曲として耳に入りやすい。曲名の通り華やかな印象を持ちながら、実際の演奏は派手さだけで進むわけではない。テーマの提示からソロへの移行までが自然で、フルートの音がリズム隊の上を滑るというより、リズムの内部に入り込んでいく感触がある。Bobbi Humphreyのフレージングがよく見える曲で、メロディの輪郭とグルーヴの両方が確認しやすい。

この曲では、フルートが軽い主役ではなく、バンド全体の推進力をまとめる役割も担っているように聴こえる。派手な展開を作るというより、同じモチーフを繰り返しながら少しずつ熱量を上げていく作りで、70年代ジャズ・ファンクの実用性がよく出ている。タイトル曲として置かれていることにも納得感がある。

もう一つの注目点は、Latin Jazzの色が見えやすい楽曲群である。打楽器的なアクセントや、拍の揺れを感じさせる部分では、単純なファンクの枠に収まらない。Bobbi Humphreyのフルートは、こうした曲でこそ強みが出やすい。音の立ち上がりが明確で、細かなフレーズでも輪郭が崩れにくいため、リズムの密度が上がっても聴感上の整理がつきやすい。

1975年という時代の中で

1975年のBlue Noteは、レーベルの歴史の中でも転換期にあたる。伝統的なハード・バップの名門という顔に加えて、より現代的でソウル寄りの作品も発表されていた時期で、『Fancy Dancer』はその空気をよく映している。ジャズの演奏技法を保ちながら、当時のR&Bやファンクに接続する作りは、同時代のDonald Byrd周辺や、よりクロスオーバーな方向へ進んだ作品群とも響き合う。

その一方で、Bobbi Humphreyの作品は、単に時流に乗ったクロスオーバーではなく、フルートという楽器の特性を使って独自の聴感を作っている点に特徴がある。『Fancy Dancer』は、そうした彼女の持ち味が比較的明快に出た1975年作として、Blue Noteの70年代を語るうえでも外しにくい一枚である。

トラックリスト

  1. A1 Uno Esta 6:40
  2. A2 The Trip 5:36
  3. A3 You Make Me Feel So Good 6:12
  4. B1 Fancy Dancer 5:42
  5. B2 Mestizo Eyes 4:49
  6. B3 Sweeter Than Sugar 4:20
  7. B4 Please Set Me At Ease 6:05

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