Siouxsie & The Banshees - The Scream (1978)
Siouxsie & The Banshees『The Scream』日本盤LPレビュー
Siouxsie & The Bansheesのデビュー・スタジオ・アルバム『The Scream』は、1978年11月にオリジナル発売された作品で、バンドの初期像をそのまま刻んだ一枚。Siouxsie Siouxの歌、Steven Severinのベース、そしてJohn McKayのギター、Kenny Morrisのドラムという編成で、後年のバンド像よりもずっと硬質で、演奏の余白が少ない。1979年に日本で出たこのPolydor盤は、オリジナル発売から少し後のタイミングで国内流通したもので、当時のポストパンク/初期ゴスの空気をそのまま伝える再登場盤として見るとわかりやすい。
バンド自体は1976年にロンドンで結成され、パンク直後のロンドン・シーンの中から出てきた存在だが、このアルバムでは単なるパンクの延長では片づけにくい輪郭がすでに見える。演奏は荒さを残しながらも、曲の作りは意外に整理されていて、ベースの反復、ギターの鋭い音色、Siouxsieの声の抑揚が曲ごとにきちんと配置されている。The CureやMagazine、Joy Division周辺と並べて語られることが多いのも納得できる流れで、のちのゴス・ロックの土台として聴かれる理由もはっきりしている。
アルバム全体の印象
『The Scream』を通して聴くと、まず耳に残るのは音の隙間の使い方。派手な装飾は少なく、低音域のうねりと乾いたギターが前に出る。録音はロンドンのRAK Studios、ミックスはDe Lane Lea Studiosで行われており、音像は大きく膨らむというより、各パートがやや突き放されたように配置されている。結果として、緊張感のある硬い手触りが続く。Siouxsieのボーカルも、叫びに寄り切らず、語りかけと突き放しを行き来するような場面が多い。
この盤の魅力は、後年の洗練されたゴス像よりも、もっと生々しい初期衝動にある。曲によっては演奏の粗さがそのまま推進力になっていて、整いすぎていないことがむしろ作品の輪郭を強くしている。1979年の日本盤として手に取ると、当時の国内でこのバンドがどう受け止められていたかを想像させる資料性もある。Polydorの日本盤らしく、オリジナルの流れを保ちながら紹介された一枚という位置づけ。
注目曲「Hong Kong Garden」
このアルバムを語るうえで外せないのが「Hong Kong Garden」。シングルとして先に発表され、バンドの代表曲として知られる一曲だが、アルバムの中でも印象は強い。短い尺の中に、鋭いリズム、耳に残るフレーズ、そしてSiouxsieの明確な歌の輪郭がまとまっていて、初期Bansheesの入口として非常にわかりやすい。アルバム全体の不穏さの中で、比較的すっと頭に入ってくる曲でもある。
ただ、単に聴きやすいだけではない。メロディの明るさと、演奏の張りつめた空気が同居していて、ポップさと緊張感の接点にこのバンドの個性が見える。後のゴス・ロックで強調される陰影は、ここではまだ輪郭の段階だが、その芽はすでにある。シングルとしての完成度と、アルバムの文脈に置いたときの異物感、その両方が面白い。
注目曲「Metal Postcard」
「Metal Postcard」は、この作品の硬質さを象徴する曲。ベースの反復とギターの刺さるような音が前景に出て、リズムの進み方も直線的というより引きずるような感触がある。Siouxsieの声も、ここではメロディをなぞるというより、音の塊の上に言葉を置いていくような印象だ。アルバムの中でも特に、初期Bansheesの冷たい手触りがよく出ている。
この曲を聴くと、当時のポストパンクがパンクの速度だけでなく、音の質感そのものを組み替えようとしていたことがわかりやすい。単純な疾走ではなく、間、反復、低音の圧で押していく作り。派手な展開は少ないが、そのぶん一つ一つの音の役割がはっきりしている。アルバムの中での存在感も大きい。
作品の位置づけ
『The Scream』は、Siouxsie & The Bansheesの出発点として重要なだけでなく、後のバンドが築く独自の陰影の原型としても見られる一枚。1978年という時点で、パンクの熱気がまだ残る中に、より冷えた感触、より構造的な緊張を持ち込んでいる。しかもそのやり方が大仰ではなく、編成の少なさと演奏の切り詰め方で成立しているところが面白い。
日本盤LPとしては1979年発売。オリジナルの1978年盤とは時期がずれるが、収録された音楽そのものは初期Bansheesの核心をよく伝えている。派手な名人芸よりも、バンドの輪郭が立ち上がる瞬間を記録した作品。Siouxsie Siouxの存在感、Steven Severinのベースの推進力、John McKayのギターの鋭さ、その三つがまず耳に残るアルバムである。
トラックリスト
- A1 Hong Kong Garden 2:55
- A2 Jigsaw Feeling 4:37
- A3 Overground 3:47
- A4 Carcass 3:49
- A5 Helter Skelter 3:45
- B1 Mirage 2:47
- B2 Metal Postcard (Mittageisen) 4:12
- B3 Nicotine Stain 2:56
- B4 Suburban Relapse 4:10
- B5 Switch 6:46
- B6 Pure 1:50
動画
- Pure
- Jigsaw Feeling
- Overground
- Carcass
- Helter Skelter
- Mirage
- Metal Postcard (Mittageisen)
- Nicotine Stain
- Suburban Relapse
- Switch