Vinyl Record Reviews
Anoraak(アノラーク)は、フランス・ナントを拠点に活動するFrédéric Rivièreのソロ・プロジェクトだ。Rivièreはシンガー、プロデューサー、DJ、マルチ・インストゥルメンタリストとして活動していて、Pony Pony Run Runではドラマーを務めていた。Anoraakは、そうした経歴を土台にした電子音楽のプロジェクトとして始まっている。
Rivièreはナントの音楽コレクティヴ兼ブログ「Valerie」の立ち上げにも関わっている。ValerieにはCollegeやMinitel Roseらが参加していて、80年代のシンセ・サウンドを参照した作品群を発信していた。Anoraakもこの流れの中で知られるようになり、レトロなシンセ感を持つ楽曲で注目を集めた。
ウェブ上で広まった代表曲としては、2008年の『Nightdrive With You』がよく挙げられる。これはAnoraakとしてロックからエレクトロへ移った最初期のアルバムで、フランスでは1000枚限定のナンバリング盤としてCD化された。タイトル曲はブログ圏で反響があり、Anoraakの名前を広めるきっかけになった。
その後もAnoraakは継続して作品を発表している。アルバムは『Wherever The Sun Sets』(2011年)、『Chronotropic』(2013年)などがあり、EPやシングルも多い。レーベルはNaïve、Kitsuné、自身のEndless Summer Musicなどを通じてリリースしてきた。2025年には新作『Golden Hour』も発表している。
『Nightdrive With You』は10年後にGrand Blancによるボーナス曲やリミックスを加えたリマスター盤として再発され、ピンクとブルーのカラー・ヴァイナルでも出ている。過去作が再評価される流れも、Anoraakの活動の中では押さえておきたいところだ。
Anoraakのサウンドは、シンセポップ、シンセウェイヴを軸にしながら、ディスコ、イタロ・ディスコ、ニュー・ディスコ、インディー・ダンス、ドリーム・ポップ、ハウスまで広くつながっている。電子音のリフやビートを前に出しつつ、歌ものとしても聴ける曲が多い。
作品全体を見ると、80年代のシンセ・ポップを参照しながら、現在のダンス・ミュージックやインディー・エレクトロの感覚も入れている。懐古的な音像だけに寄らず、クラブ寄りのトラックとして機能する曲もあるのが特徴だ。
Anoraakは、Sally Shapiro、Lydmor、Slow Shiver、Collegeらとの共作を行っている。リミックスではNeon IndianやMikaなども手がけていて、単独プロジェクトでありながら、周辺のシーンとの接点が多い。
また、映画『Drive』のサウンドトラックで80年代風シンセ・サウンドが注目された時期には、College、Electric Youthとともに「Drive Tour」に参加している。シンセウェイヴやレトロウェイヴの文脈で語られることが多いのも、このあたりの活動とつながっている。