Vinyl Record Reviews
Billy Preston(ビリー・プレストン)は、1946年9月2日にテキサス州ヒューストンで生まれ、主にロサンゼルスで育ったキーボーディスト、シンガー、ソングライターだ。ジャンルはFunk / Soulを軸に、Rhythm & Blues、Gospelまで広くまたいでいる。1990年代以降は健康面や法的な問題も報じられたが、2006年6月6日にアリゾナ州スコッツデールで59歳で亡くなった。
プレストンは独学で鍵盤を身につけ、10歳の頃にはMahalia Jacksonらゴスペル歌手のバックでオルガンを弾いていたとされる。11歳でNat King ColeのNBC番組に出演し、Fats Dominoの曲を演奏した記録もある。1958年の映画『St. Louis Blues』では、少年時代のW.C. Handy役を演じている。
1962年にはLittle Richardのバンドにオルガン奏者として参加し、ハンブルク公演で若い頃のBeatlesとも出会っている。1965年にはテレビ番組『Shindig!』に出演し、1967年にはRay Charlesのバンドに加わった。かなり早い段階から、ゴスペル、R&B、ロックンロールの現場を行き来していた人物だ。
1969年、Beatlesの「Get Back」セッションに招かれ、オルガンとエレクトリック・ピアノを担当した。このときのシングルは「The Beatles with Billy Preston」名義でクレジットされ、Beatlesの公式作品で外部ミュージシャンとしてアーティスト名が入った数少ない例になっている。『Abbey Road』にも参加している。
同年には、George HarrisonのプロデュースでApple Recordsから「That's The Way God Planned It」を発表し、全英11位を記録した。同名アルバムにはKeith Richards、Eric Clapton、Ginger Bakerらも参加している。1971年8月の「バングラデシュ・コンサート」でもHarrisonやClaptonとともにこの曲を歌っている。
1970年代前半は、ソロ・アーティストとしての存在感が強まった時期だ。A&M移籍後に出したインスト曲「Outa-Space」はBillboard Hot 100で2位を記録し、グラミー賞を受賞した。「Will It Go Round In Circles」と「Nothing From Nothing」はHot 100で1位、「Space Race」は4位を記録している。
この時期の作品では、鍵盤のリフや反復するフレーズが前に出る曲が多い。ファンク寄りのビートに、ソウルやゴスペルの要素がそのまま乗っている。歌ものでも、演奏でも、プレストンの持ち味ははっきりしている。
プレストンは共作者としても知られる。「You Are So Beautiful」はJoe Cockerの代表曲として広く知られているが、プレストンの共作だ。演奏面では、The Rolling Stonesのツアーに1973年から1977年までキーボーディストとして参加している。
そのほかにも、The Band、Nat King Cole、Little Richard、Eric Burdon、Ray Charles、George Harrison、Elton John、Eric Clapton、Bob Dylan、Sam Cooke、King Curtis、Sammy Davis Jr.、Aretha Franklin、The Jackson 5、Quincy Jones、Mick Jagger、Richie Sambora、Sly Stone、Johnny Cash、Neil Diamond、Red Hot Chili Peppers、Ringo Starrなど、多くのアーティストと関わっている。ジャンルの境目をまたいで仕事をしていたことが分かる。
プレストンの中心にあるのは、Fender Rhodes electric pianoとHammond organだ。特に1969年のBeatles関連セッションでは、この2つの鍵盤楽器が重要な役割を担っていた。演奏は、ゴスペル由来のコード感とR&Bのリズム感が土台になっている。
歌声も含めて、ソウル、ファンク、ゴスペルの要素がまとまっているところが特徴だ。派手に前へ出るというより、曲の骨組みを支えながら、必要な場所で存在感を出すタイプのプレイヤーとして扱われることが多い。
1990年代は薬物依存や法的なトラブルに苦しんだとされる。2006年6月6日に腎臓病と呼吸不全で亡くなった。のちに2021年、Rock and Roll Hall of FameのMusical Excellence Awardで殿堂入りしている。
ビリー・プレストンは、ソロでもセッションでも、楽曲の中で鍵盤をどう機能させるかをよく知ったミュージシャンだった。Beatlesとの関わりや「Outa-Space」のヒットだけでなく、ゴスペルからファンクまでをつなぐ演奏家としても記録されている。