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Blood Orange(ブラッド・オレンジ)は、イギリス・ロンドン出身のシンガーソングライター、マルチ・インストゥルメンタリスト、プロデューサー、作曲家であるDev Hynes(デヴ・ハインズ/Devonté Hynes、出生名:David Joseph Michael Hynes、1985年12月23日生まれ)によるソロ・プロジェクト名義だ。東ロンドンのレッドブリッジ区イルフォードにてガイアナ出身の母とシエラレオネ出身の父のもとで生まれ、チャドウェル・ヒース・ファウンデーション・スクールで学んだのち、現在はニューヨークを拠点に活動している。
2004年から2006年にかけては、3人組ダンス・パンク・バンドTest Icicles(テスト・アイシクルズ)のギタリスト、シンセサイザー、ボーカルとして活動し、2005年にアルバム『For Screening Purposes Only』(Domino)をリリースした。
バンド解散後の2007年にニューヨークへ移住し、同年からLightspeed Champion(ライトスピード・チャンピオン、10代のころに数学のノートに描いていた自作コミックのタイトルに由来)の名義でソロ活動を開始した。この名義ではインディー・フォークやチェンバー・ポップ寄りの作品を発表し、ネブラスカ州オマハでSaddle CreekのプロデューサーMike Mogis(マイク・モギス)とともに録音した1stアルバム『Falling Off the Lavender Bridge』(2008年、Domino)には、Emmy the GreatやThe Faint、Cursive、Tilly and the Wallのメンバーらが参加した。ライブ・バンドにはFlorence Welch(Florence and the Machine)、Alex Turner(Arctic Monkeys)、Faris Badwan(The Horrors)らもゲスト参加している。長期ツアーによる喉の手術と休養を経て、2ndアルバム『Life Is Sweet! Nice to Meet You』(2010年)を発表したあと、Lightspeed Champion名義での活動を終了した。
ハインズは2009年末ごろから、よりR&B、ファンク、シンセ・ポップ、ニュー・ウェイヴ、エレクトロニカに焦点を当てた新プロジェクト、Blood Orangeを始動した。2011年1月にTerrible Recordsからデビュー・シングル「Dinner」を発表し、同年8月にDomino Recordsから1stアルバム『Coastal Grooves』(「Sutphin Boulevard」「Champagne Coast」などを収録)をリリースしている。
2ndアルバム『Cupid Deluxe』では、David Longstreth(Dirty Projectors)、Caroline Polachek(Chairlift)、Samantha Urbani(Friends)、Clams Casino、Despot、Kindness、Skeptaらが参加し、「Chamakay」「You're Not Good Enough」「Uncle ACE」や、イギリスのロック・バンドMansunのカバー「Always Let You Down」(原題「I Can Only Disappoint U」)などを収録した。80年代ニューヨークのポスト・パンクやディスコ・ファンク、クィア・カルチャー、現代R&Bを融合させた音楽性がPitchforkやStereogumなど各メディアの年間ベスト上位に選出され、Blood Orangeの評価を決定づけた。
3rdアルバム『Freetown Sound』は、父親の出身地であるシエラレオネの首都フリータウンに由来するタイトルを持つ。Carly Rae Jepsen、Debbie Harry、Nelly Furtado、Empress Of、Zuri Marleyらが参加し、「Augustine」「Best to You」などを収録。アイデンティティや黒人史、フェミニズム、クィアネスをテーマに掘り下げ、欧州インディペンデント音楽賞(IMPALA)の年間最優秀アルバム候補にもノミネートされた。
4thアルバム『Negro Swan』には「Charcoal Baby」「Jewelry」などを収録し、A$AP Rocky、Steve Lacy、Puff Daddy、Georgia Anne Muldrow、そしてトランスジェンダー活動家のJanet Mock(ナレーション)らが参加。周縁化された人々の抑うつと癒やし、コミュニティの連帯を描いた作品となっている。
2019年にはToro y Moi、Arca、Justine Skye、Tinasheらが参加したミックステープ『Angel's Pulse』(Domino)を発表。2022年にはRCA Recordsと契約し、EP『Four Songs』をリリースした。
2025年には5thスタジオ・アルバム『Essex Honey』(RCA)を発表。The Durutti Columnの「Sing To Me」をサンプリングした先行曲「The Field」や、「Somewhere in Between」「Mind Loaded」「Countryside」などを収録し、自身の幼少期の記憶と故郷エセックス/東ロンドンの風景を振り返る作品となった。
Dev Hynesは他アーティストの作品でも重要な役割を果たしてきた。代表的な仕事として、Solange(ソランジュ)の転機となった2012年のEP『True』(「Losing You」ほか全面共同プロデュース・共作)や、Sky Ferreira(スカイ・フェレイラ)の代表曲「Everything Is Embarrassing」(2012年)の共作・プロデュースが知られている。
そのほかにも、Carly Rae Jepsen(「All That」)、FKA twigs、Tinashe、Haim、Caroline Polachek、Blondie(「Long Time」をDebbie Harryと共作)、A$AP Rocky(「Hun43rd」)、Mac Miller(「Self Care」)、Turnstile(「Alien Love Call」)、The Chemical Brothers(「All Rights Reversed」)、Florence and the Machine、Kylie Minogue(「Crystallize」)、Mariah Carey、Daniel Caesar、The Charlatans(2025年作『We Are Love』プロデュース)など、ジャンルを横断して幅広いアーティストと協業している。
映画・ドラマ音楽や現代音楽の分野でも活動しており、ジア・コッポラ監督『Palo Alto(パロアルト・ストーリー)』(2013年)、メリーナ・マツオカス監督『Queen & Slim(クイーン&スリム)』(2019年)、ルカ・グァダニーノ監督のドラマ『We Are Who We Are』(2020年)、レベッカ・ホール監督『Passing(白いカラス)』(2021年)、ポール・シュレイダー監督『Master Gardener(マスター・ガーデナー)』(2022年)などでスコアを担当した。
さらに、現代音楽の作曲家Philip Glass(フィリップ・グラス)とカーネギー・ホールやケネディ・センターで共演したほか、パーカッション・アンサンブルThird Coast Percussionのために書き下ろした室内楽作品集『Fields』(2019年)はグラミー賞の最優秀室内楽/小編成アンサンブル・パフォーマンス部門にノミネートされている。