Vinyl Record Reviews
Brian Auger's Oblivion Express(ブライアン・オーガーズ・オブリヴィオン・エクスプレス)は、1970年にイギリス・ロンドンで結成されたジャズ・ロック/ジャズ・ファンク/フュージョン・バンドだ。60年代のモッズ/R&Bシーンを牽引した名オルガン奏者ブライアン・オーガーが、ジュリー・ドリスコールとのトリニティ(The Trinity)解散後に結成した。
ブライアン・オーガーは、マイルス・デイヴィスの『In a Silent Way』などに触発され、当時の商業ポップスの枠に収まらない演奏を目指していた。そこで、ジャズの即興性とファンク/ロックのビートを組み合わせる方向へ進み、Oblivion Expressを始動させた。バンド名には、流行に乗るのではなく「忘却(Oblivion)」へ向かう列車に乗る覚悟が込められている。
Brian Augerの演奏を軸に、ハモンドB-3オルガン、フェンダー・ローズ、ムーグ・シンセサイザーが前面に出る。そこへ、タイトに組まれたファンク・ビートとロック寄りの推進力が加わる。演奏の中心は鍵盤だが、単独のソロを押し出すというより、バンド全体でリズムを組み立てる場面が多い。
参加メンバーには、後にアヴェレージ・ホワイト・バンド(Average White Band)で世界的な名声を博すドラマーのロビー・マッキントッシュやスティーヴ・フェローン、ギタリストのジム・マレン、サンタナで活動するアレックス・リガートウッドらがいる。こうした人選からも、英米のジャズ・ファンクやソウルの現場とつながりの深いバンドだったことがうかがえる。
1970年のデビュー作『Brian Auger's Oblivion Express』は、ジャズ・ロック色の強い1枚として位置づけられている。続く『Second Wind』(1972年)では、アレックス・リガートウッドやジム・マレンが加わり、バンドのアンサンブルがより洗練されていく。
特に評価が高いのが『Closer To It!』(1973年)だ。この作品はグループの代表作として扱われることが多く、米ビルボードのジャズ、R&B、ポップの各チャートに入った。収録曲「Happiness Is Just Around the Bend」は、このバンドを語るうえで外せない不朽の名曲として知られている。
その後の『Straight Ahead』(1974年)でも、前作で見せたジャズ・ファンク路線が続く。『Reinforcements』(1975年)では、ソウル寄り、ディスコ寄りのグルーヴも取り入れられている。
Brian Auger's Oblivion Expressは、イギリス発のジャズ・ファンク/クロスオーバーの先駆けとして扱われている。1980年代末から1990年代にかけてのアシッド・ジャズやレア・グルーヴの文脈でも再評価が進んだ。
「Happiness Is Just Around the Bend」は、メイン・イングレディエントによるソウル・カバーをはじめ、さまざまなアーティストに取り上げられている。また、ヒップホップでもサンプリング・ソースとして使われてきた。バンドからロビー・マッキントッシュやスティーヴ・フェローンが育ち、のちにアヴェレージ・ホワイト・バンドで活動した点も、音楽史の流れの中で重要な要素になっている。
ロック、ジャズ、ファンク/ソウルのあいだを行き来しながら、70年代のクロスオーバーを具体的な演奏で形にしたバンドとして、今も参照され続けている。