Vinyl Record Reviews
Dexter Wansel(デクスター・ワンセル、1950年生まれ)は、アメリカ・ペンシルベニア州フィラデルフィア出身のキーボーディスト、シンセサイザー奏者、作・編曲家、音楽プロデューサー。名門フィラデルフィア・インターナショナル・レコード(PIR)の中核として洗練されたフィリー・ソウルを支えるとともに、コズミック・ファンク/シンセ・ジャズ・フュージョンの先駆者としてヒップホップやレア・グルーヴの歴史に決定的な足跡を残した。
1970年代初頭からシグマ・サウンド・スタジオでシンセサイザー・プログラマーやセッション鍵盤奏者として活動を開始。名門スタジオ・グループMFSBのキーボード奏者を務めたほか、ケニー・ギャンブル&レオン・ハフ主宰のPIRで専属プロデューサー/アレンジャー/指揮者に抜擢された。
オージェイズ、テディ・ペンダーグラス、パティ・ラベル、スタイリスティックス、エヴリン・"シャンペン"・キングらの名作に深く関与。さらにルー・ロウルズのグラミー賞受賞アルバム『Unmistakably Lou』(1977年)を共同プロデュースするなど、70年代フィラデルフィア・ソウルの黄金期をサウンド面から強力に牽引した。
ソロ・アーティストとしては、フィリー・ソウル特有の華麗なオーケストレーションに、ARP 2600をはじめとする最先端のアナログ・シンセサイザーを大胆に導入。宇宙的なスケール感を持つコズミック・ファンク/シンセ・ソウルを開拓した。
1976年に発表したソロ・デビュー作『Life on Mars』は、レア・グルーヴやロフト/ガラージ・クラシックの聖典として知られる。特に収録曲「Theme From The Planets」のイントロ・ドラムブレイクは、伝説的コンピレーション『Ultimate Breaks & Beats』に収録されたことで、Eric B. & Rakim、DJ Shadow、The Chemical Brothersなど無数のアーティストにサンプリングされ、「ヒップホップ最初期の基礎ビート」として音楽史に不滅の名を刻んだ。
続く『What the World Is Coming To』(1977年)、『Voyager』(1978年)、『Time Is Slipping Away』(1979年)と傑作を連発し、ブラック・ミュージックにおけるシンセサイザー表現の可能性を飛躍的に押し広げた。ソウル、ファンク、ディスコ、ジャズ・フュージョンを自在に横断したその先見的なサウンドは、今なお世界中のDJやクリエイターから深く敬愛されている。