Dexter Wansel - Life On Mars (1976)
Dexter Wansel『Life On Mars』
フィラデルフィア・ソウルの総本山フィラデルフィア・インターナショナル・レコード(PIR)の専属プロデューサー/ソングライター/鍵盤奏者、デクスター・ワンゼル(Dexter Wansel)が1976年に発表したソロ・デビュー・アルバム。フィリー・サウンドの壮麗なオーケストレーションに最新鋭のシンセサイザーとフュージョン・マナーを注入し、コズミック・ファンクの金字塔となった名盤である。録音はシグマ・サウンド・スタジオ(Sigma Sound Studios)で行われた。
制作背景・エピソード
本作でワンゼルは、当時まだ珍しかったARP 2600やMinimoog、ARPストリング・アンサンブルといったアナログ・シンセサイザーを自らプログラミング・演奏した。バックにはドラマーのダリル・ブラウン(Darryl Brown)、ベーシストのデリック・グレイヴス(Derrick Graves)、ギタリストのハーブ・スミス(Herb Smith)、パーカッショニストのジョー・ジョンソン(Joe Johnson)らMFSB周辺の凄腕たちが集結し、女性シンガーのテリー・ウェルズ(Terri Wells)が清涼な歌声を添えている。
アルバム全体が宇宙や惑星探査をモチーフにしたコンセプチュアルな作品となっており、近未来的なジャケット写真は、建築家ルドルフ・デ・ハラクがマンハッタンに設計した有名な「ライト・トンネル(The Light Tunnel)」で撮影された。
時代の文脈
1976年のPIRは、ギャンブル&ハフの指揮のもと流麗なストリングスと洗練されたダンス・ビートで世界の音楽シーンを席巻していた最盛期。オーケストラルなフィリー・ソウルの伝統を土台にしながら、電子シンセサイザーとフュージョン/ジャズ・ファンクの手法を大胆に融合させた本作は、「コズミック・ファンク」「スペース・ディスコ」という新たな地平を切り拓いた先駆的傑作となった。
後世への影響
1980年代以降、ヒップホップやレア・グルーヴの文脈において最も決定的な影響を与えたアルバムのひとつとして神格化されている。
特にB3「Theme From The Planets」の冒頭4小節のドラム・ブレイク(ダリル・ブラウンのドラミング)は、エリック・B&ラキム(Eric B. & Rakim)の歴史的名曲「I Ain't No Joke」(1987年)でサンプリングされたことで知られ、300曲以上で引用された「ヒップホップの礎石となった最初のブレイクビーツのひとつ」と称されている。また、スペーシーなシンセとファンク・ビートが融合したタイトル曲「Life On Mars」はガラージやコズミック・ディスコの定番として愛され続け、Jディラ(J Dilla)やピート・ロック(Pete Rock)、DJシャドウ(DJ Shadow)ら数多くのプロデューサーに多大なインスピレーションを与えた。
サウンド・聴きどころ
冷徹でフューチャリスティックなシンセサイザーのうねりと、フィリー特有の温もりあるオーケストレーションが見事に調和している。スリリングな高速ジャズ・ファンク「A Prophet Named K.G.」、コズミックな浮遊感が心地よい「Life On Mars」、テリー・ウェルズが歌う極上のメロウ・ソウル「Together Once Again」、そして重量級のブレイクビーツが炸裂する「Theme From The Planets」など、全編にわたって極めて濃密なフューチャリスティック・ソウルが展開されている。
トラックリスト
- A1 A Prophet Named K.G. 4:20
- A2 Life On Mars 5:50
- A3 Together Once Again 4:23
- A4 Stargazer 3:20
- B1 One Million Miles From The Ground 5:00
- B2 You Can Be What You Wanna Be 5:04
- B3 Theme From The Planets 4:53
- B4 Rings Of Saturn 3:43
動画プレイリスト
このアーティストについて
Dexter Wansel(デクスター・ワンセル、1950年生まれ)は、アメリカ・ペンシルベニア州フィラデルフィア出身のキーボーディスト、シンセサイザー奏者...
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