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El Chicanoは、1960年代末のイースト・ロサンゼルスで育ったラティーノ音楽シーンから登場した、チカーノ・ロック/ラテン・ジャズ・バンドだ。もともとはフレディ・サンチェス(Freddie Sanchez)を中心に「The V.I.P.’s」として活動していたが、チカーノ運動の高まりの中で「El Chicano」に改名した。バンド名の変更には、自分たちのルーツと誇りを前面に出す強い意識が反映されている。
El Chicanoの名前を一躍全米に知らしめたのが、1970年のシングル「Viva Tirado」だ。これはジャズの巨匠ジェラルド・ウィルソンが闘牛士ホセ・ラモン・ティラドに捧げて書いた曲を、ミディアムテンポのラテン・ジャズ・ファンクとしてカヴァーしたもの。ロサンゼルスのラジオ局で13週連続1位を記録し、全米チャートでも大ヒットを記録した。ゴールドディスクを獲得し、BillboardやCashboxでその年のジャズ・グループとして高い評価を受けている。
この曲は、イーストLAのローライダー・カルチャーやチカーノ・コミュニティの不滅のアンセムとして愛され続けている。また、チカーノのバンドとして史上初めてニューヨーク・ハーレムのアポロ・シアターに出演を果たした点も、人種や文化の壁を打ち破る象徴的な出来事となった。
「Viva Tirado」の成功後、El ChicanoはMCA Recordsから継続して秀作を発表した。1970年代から1980年代半ばにかけて、10枚のアルバムを精力的にリリースしている。
これらをはじめとするMCA時代の作品群は、ラテン・ロックの中でも極めて完成度の高い録音として現在も評価が高い。
El Chicanoのサウンドは、ロックを土台にしながら、ジャズ、ソウル、ファンク、ラテン・ジャズが有機的に融合している。SantanaやMaloと並べて語られることが多いが、El Chicanoは特にジャズとソウルへの傾倒が強いのが大きな特徴だ。
ボビー・エスピノーサ(Bobby Espinosa)のハモンドB3オルガンは、ジミー・スミス直系のブルース感覚とジャズの洗練を併せ持つ。ミッキー・レスプロン(Mickey Lespron)のギターは、ウェス・モンゴメリーの影響を感じさせるオクターブ奏法やジャジーなフレーズが光る。そこにコンガやティンバレスなどの熱いラテン・パーカッションが加わり、フレディ・サンチェスの堅実なベースが全体を支える。
レパートリーも幅広く、ハービー・ハンコックの「Cantaloupe Island」のような本格的なラテン・ジャズ・インストから、ヴァン・モリソンを甘美に歌った「Brown-Eyed Girl」、全米Top 40ヒットとなった「Tell Her She's Lovely」のようなスウィートな「ブラウン・アイド・ソウル」まで、多彩な音楽性を披露した。
El Chicanoの重要性は、卓越した演奏力にとどまらない。ロック、ジャズ、R&B、アフロ・キューバン音楽を結びつけながら、アメリカのポップ・ミュージック界においてチカーノ文化の確固たる存在感を示した点にある。イーストLA発祥のバンドとして、ラテン・ロックの歴史の中で比類なき商業的・芸術的成功を収めたパイオニアだ。
現在でも、ローライダー・カルチャー、レア・グルーヴ、チカーノ・ソウルの文脈で絶大な支持を集めており、代表曲「Viva Tirado」をはじめとする彼らの豊かな音楽的遺産は、世代を超えて聴き継がれている。