Vinyl Record Reviews
Jack-Knifeは、1979年にアルバム『I Wish You Would』を1枚だけ残した、英独混成の単発プロジェクトだ。メンバーはジョン・ウェットン、リチャード・パーマー=ジェイムス、ジョン(W.J.)・ハッチソン、カート・クレスの4人で、プロフィール上はAnglo-German supergroupとされている。
中心にいるのは、キング・クリムゾン、ロキシー・ミュージック、U.K.などで知られるジョン・ウェットンだ。ベースとリード・ヴォーカルを担当し、キーボードも演奏している。ギターのリチャード・パーマー=ジェイムスは、スーパートランプの創設メンバーとして知られ、その後はキング・クリムゾンの『太陽と戦慄』『暗黒の世界』『レッド』で作詞を担当した人物だ。
ジョン(W.J.)・ハッチソンはハモンド・オルガン、ピアノ、バッキング・ヴォーカルを担当し、カート・クレスはドラムスとパーカッションを受け持った。クレスはPassportやEmergencyでの活動で知られている。
ウェブ検索で確認できる情報では、このプロジェクトはウェットンとパーマー=ジェイムスの旧交が土台になっている。2人はイングランドのボーンマスで、The Corvettes、The Palmer-James Group、Tetrad、Ginger Manなどの地元バンドを共にしていた。
その後、パーマー=ジェイムスは1970年代初頭からミュンヘンに居住していた。アルバム制作は、ウェットンとTetrad時代の仲間ハッチソンがミュンヘンのパーマー=ジェイムス宅を訪ねたことをきっかけに進んだとされる。
『I Wish You Would』は1978年2月、ミュンヘンのミュージックランド・スタジオで約10日間かけて録音され、ニューヨークのスターリング・サウンドでマスタリングされた。アルバムは1979年に発表されている。
ウェットン本人はこの企画について、学生時代を共にした友人たちと、当時よく演奏していた曲のアルバムを作るための口実だったと語っている。実際、作品全体にもその説明に沿った気配があり、キャリアを大きく切り開くための企画というより、既知の曲を軸にしたセッション色の強い内容として受け取られている。
ジャンルはRockに分類され、スタイルとしてはBlues RockとProg Rockが挙げられている。演奏面では、ウェットンのベースとヴォーカル、パーマー=ジェイムスのギター、ハッチソンのオルガンやピアノ、クレスのドラムがしっかり役割を分けている構成だ。
作品の性格としては、ブルース・ロックを基調にした気楽なセッションの趣がある。プログレッシブ・ロックの文脈にいるメンバーが揃っているものの、ここでは大規模な組曲や複雑な展開よりも、バンドでの合奏感や曲の骨格を前に出した作りが目立つ。
Jack-Knifeは、キング・クリムゾン周辺の人脈と、ドイツ側のロック・シーンが交差した例として見ることができる。ウェットンとパーマー=ジェイムスの関係、そしてクレスのPassportやEmergencyでの活動歴は、このプロジェクトを単なる一回限りの寄せ集めではなく、複数のシーンをまたいだ実働メンバーによる録音として位置づけている。
後年には、ウェットン&パーマー=ジェイムス名義の『Monkey Business』とカップリングしたCDも出ている。単独作として終わったプロジェクトではあるが、参加メンバーの経歴をたどると、1970年代末の英独ロックのつながりが見えてくる。