Vinyl Record Reviews
Peter Baumannは、1953年1月29日生まれのドイツ・ベルリン出身の電子音楽家、レーベル・オーナーだ。1971年、18歳でTangerine Dreamに加入し、1970年代の同グループの重要な時期に活動した。加入当初はシンセサイザー奏者ではなかったが、その後のTangerine Dreamの音楽ではシンセサイザーが前面に出る流れに関わったとされている。
Baumannは1971年から1977年までTangerine Dreamに在籍した。『Phaedra』(1974年)、『Rubycon』(1975年)、『Stratosfear』(1976年)など、グループの代表的な作品に参加している。バンドとともに世界各地をツアーし、複数のゴールドレコードにも関わった。
この時期のTangerine Dreamは、長尺のシーケンスやシンセサイザーを使った演奏で知られるが、Baumannはその中心的な時期にいたメンバーのひとりだ。
1977年にTangerine Dreamを離れた後、Baumannは同年に『Romance '76』でソロ・デビューした。その後、『Trans Harmonic Nights』(1979年)、『Repeat Repeat』(1981年)、『Strangers in the Night』(1983年)などを発表している。これらの作品では、Tangerine Dream時代の流れを引きつつ、よりシンセ・ポップ寄りの方向も見える。
ソロ期の作品名を追うだけでも、バンド時代の実験的な電子音楽から、より曲として聴かせる形へ移っていった様子が見えてくる。シンセサイザーの音色を軸にしながら、歌ものやポップ寄りの感覚も取り入れていた時期として整理できる。
BaumannはベルリンのParagon Studioを所有していた。クラスターのHans-Joachim Roedeliusのソロ作『Jardin au Fou』(1979年)では、このスタジオでの録音をプロデュースしている。
1984年から1996年にかけては、インストゥルメンタル音楽を中心に扱うレーベルPrivate Musicを運営した。ここからは、Yanni、Patrick O'Hearn、Jerry Goodman、Suzanne Ciani、Tangerine Dreamの作品などが送り出されている。1996年にはこのレーベルをBMGに売却している。
2000年代初めにはサンフランシスコに移り、その後は哲学や科学に関する探求に軸足を移した。2009年には、意識と人間の健康・幸福との関係を探ることを掲げたBaumann Foundationを設立している。
音楽面では、2015年にエドガー・フローゼとともに『Quantum Key』『Quantum Gate』のスケッチに取り組んだことをきっかけに、Tangerine Dreamへ一時復帰した。その後は2015年12月に再び離脱している。ソロ作としては『Machines of Desire』(2016年)や、Paul Haslingerとの共作『Neuland』(2019年)も発表している。
Peter Baumannは、Tangerine Dreamの初期から中期にかけての電子音楽の流れと、その後のソロ作品でのシンセ・ポップ寄りの展開の両方を追える人物だ。演奏者としてだけでなく、スタジオ運営やレーベル経営でも電子音楽の流通と制作に関わってきた。
作品をたどると、1970年代のベルリン系電子音楽、1980年代のインストゥルメンタル/ニューエイジ系レーベル運営、2010年代以降の再始動まで、活動の幅がかなり広い。電子音楽の歴史を追うときに、名前を押さえておきたいアーティストのひとりだ。