Vinyl Record Reviews
Heaven 17(ヘヴン17)は、1980年にイングランドのシェフィールドで結成されたシンセポップ/ニュー・ウェイヴ・グループだ。メンバーはGlenn Gregory、Martyn Ware、Ian Craig Marshの3人で、もともとはThe Human Leagueを離れたMartyn WareとIan Craig Marshが立ち上げたプロダクション・カンパニー、British Electric Foundation(B.E.F.)のプロジェクトとして始まっている。
グループ名は、Stanley Kubrickの映画版でも知られる『時計じかけのオレンジ』に登場する架空のバンド名から取られている。作品名の引用元がはっきりしている点も、このグループらしい出発点だ。
Heaven 17のデビュー・シングルは「(We Don't Need This) Fascist Groove Thang」だ。政治的な内容を含むこの曲は、当時のRonald Reaganに対する名誉毀損にあたるおそれがあるとしてBBCで放送禁止になった。初期から、ただのダンス・ポップではない緊張感を持った曲作りをしていたことがわかる。
同年に発表されたデビュー・アルバム『Penthouse And Pavement』は全英14位を記録した。ここでは、ファンク、ディスコ、エレクトロの要素をシンセサイザー主体のサウンドにまとめている。ダンス・ミュージックの形式を使いながら、都市的なテーマや社会的な視点も入れているのが特徴だ。
1983年の2作目『The Luxury Gap』は全英4位を記録した。中でも「Temptation」は、女性ボーカリストCarol Kenyonとの掛け合いと、オーケストラ・アレンジを組み合わせた曲として知られている。全英2位を記録し、Heaven 17の最大のヒットになった。
この曲は1992年にBrothers In Rhythmによるリミックスでも全英4位を記録していて、オリジナル発表後もクラブやラジオの文脈で長く扱われてきたことがわかる。Heaven 17の中でも、最も広く知られている楽曲のひとつだ。
Heaven 17は、ハードなギターを前面に出すタイプではなく、キーボードとシンセサイザーで曲を組み立てるスタイルを取っている。Martyn WareとIan Craig Marshの制作面での発想に、Glenn Gregoryのボーカルが乗る形で、機械的な音と人の声を組み合わせているのがポイントだ。
1984年には『How Men Are』を発表している。Heaven 17は長くスタジオ中心のプロジェクトとして活動していて、初めてライヴを行ったのは1997年になってからだ。その後、Ian Craig Marshは2006年に脱退し、以降はGlenn GregoryとMartyn Wareの2人で活動を続けている。
Martyn WareはB.E.F.としてのプロデュースでも知られていて、Tina Turnerの復活を支えた「Let's Stay Together」のカバーも手がけている。Heaven 17の活動とあわせて、80年代の英国エレクトロ/ポップの制作面でも名前が挙がる存在だ。
まず押さえたいのは「(We Don't Need This) Fascist Groove Thang」「Temptation」「Let Me Go」あたりだ。どれもHeaven 17の持つ、シンセ主体のアレンジ、ダンス・ミュージックの感触、そしてボーカルの存在感が出ている。アルバム単位では『Penthouse And Pavement』と『The Luxury Gap』が入口になりやすい。
80年代英国のシンセポップを追うなら、The Human League周辺からB.E.F.、そしてHeaven 17へつながる流れも見ておきたい。バンドとしての表側だけでなく、制作ユニットとしての背景も含めてたどると、音の作り方が見えやすい。