Vinyl Record Reviews
Rufus Thomas(ルーファス・トーマス/1917–2001)は、ミシシッピ州ケイシー生まれ、テネシー州メンフィス育ちのR&B/ソウル/ファンク・シンガー、ソングライター、エンターテイナー、そして名物ラジオDJだ。「The World's Oldest Teenager(世界最高齢のティーンエイジャー)」の愛称で広く親しまれ、1930年代のボードヴィルから1970年代のファンク黄金期まで、半世紀以上にわたってメンフィスの黒人音楽シーンを牽引した巨人である。
トーマスは1930年代、タップダンサーやコメディアンとしてエンターテインメントの世界に足を踏み入れた。南部を巡業した名門テントショー「ラビット・フット・ミンストレルズ」に参加し、ブルースの女王マ・レイニーらと同じ舞台に立って磨いた軽妙な話術とステージ度胸は、彼の終生の武器となった。
1940年代末からは、全米初となる黒人向けラジオ局メンフィスWDIAの看板ディスクジョッキーとしてマイクを握り、最新のR&Bを紹介。街のゴッドファーザーとして絶大な影響力を誇り、紡績工場で働きながら音楽シーンのキングメーカーとして君臨した。
ルーファス・トーマスは、アメリカ音楽史を塗り替えた二大名門レーベル双方の最初期ヒットを放った稀有な経歴を持つ。
1953年、サム・フィリップス率いるサン・レコード(Sun Records)から、ビッグ・ママ・ソーントンの「Hound Dog」へのアンサーソング「Bear Cat」を吹き込み、サン・レコードに史上初の全米R&Bヒットをもたらした。さらに1960年には、愛娘カーラ・トーマス(Carla Thomas)と共にSatellite Records(後のStax Records)の最初期シングル「'Cause I Love You」を録音。これがスタックス・レコードの記念すべき第1号ヒットとなり、メンフィス・ソウル黄金時代の幕を開けた。
1963年、軽快な口笛のリフと跳ねるビートが印象的なダンス・ナンバー「Walking the Dog」が全米ポップチャート10位(R&Bチャート4位)の大ヒットを記録。この曲はローリング・ストーンズのデビュー作をはじめ、エアロスミスなど英米のロック・バンドにこぞってカバーされ、世界的な知名度を獲得した。
1960年代末から1970年代にかけては、より泥臭いメンフィス・ファンク路線へとシフト。「Do the Funky Chicken」(1969年/全米R&B 5位)、「(Do The) Push and Pull」、「The Funky Penguin」など、ユーモラスな動物ダンス曲を連発。1972年の歴史的フェスティバル「Wattstax(ワッツタックス)」では、ピンクのホットパンツとケープ、白いサイハイブーツという破天荒な出で立ちで登場し、10万人以上の観衆を熱狂させた。
トーマスのDNAは子どもたちにも見事に受け継がれた。娘のカーラ・トーマスは「クイーン・オブ・メンフィス・ソウル」として名を馳せ、息子のマーヴェル・トーマス(Marvell Thomas)はスタックスの屋台骨を支えた名キーボーディスト/アレンジャー、次女ヴァニーズ・トーマス(Vaneese Thomas)も一流のソウル歌手・作曲家として成功を収めた。
2001年に84歳で世を去るまで、生涯現役のパフォーマーとしてメンフィスのソウル・スピリットを体現し続けたルーファス・トーマス。その軽妙洒脱なファンク・グルーヴとエンターテイナー精神は、アメリカ音楽史における不滅の至宝である。